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老後を生きる指針 さいたま市/80歳男性 |
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令和になってから「終活はしない、老後はしたいことだけをする!」という本が出てきた一方で、書店にはエンディングノートや相続に関する本などが次々に平積みされていて、何を参考に長い老後を生き抜くのが良いのか? と、迷う毎日です。
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中村寿美子 |
人間は十人十色です。老後問題では正解はないといえるでしょう。それは、人それぞれに人生観が違うからです。
それでも一つだけ納得できることは、自分が身内の介護やみとり問題で大変な苦労をした経験があり、自分のことで子どもや身内に迷惑をかけたくないと強く感じている人だけが、自分の始末を考えて終活をするということです。
例えば、寝たきりの家族を自宅でお世話すると、排せつ介護の際に漂う臭いが、家中にまで広がり、しかも、すぐには収まりません。また、要介護の家族を一人おいて、全員が外出することもできません。ショートステイを利用すれば、その場しのぎでは何とかなりますが、子育てとは違って、その状態がいつまで続くかは、誰にも分らないので、気持ちが沈んでしまう毎日になります。
一方、シングルで気ままに過ごしている友人は、「終活? 何でそんなことするの?」と不思議そうに言います。何の憂いもなく毎日を楽しく過ごしていられれば、それはそれで幸せな日々です。ただ終活とは、自分の寿命が分からないので、いつお迎えがきても良いようにと準備するものなのです。
かつて「死後離婚」や「墓じまい」ということが話題になりました。最近は「死後事務委任契約」という新しい事業が生まれています。要は終活を専門家に依頼するということです。
世の中は次々と変化していて、高齢化率は29%を超えました。そして現在は高齢者の3分の1が一人暮らしといわれています。郵便ポストが満杯になっているので近所の人が不審に思い、警察に届けて警察官が鍵を開けたところ、高齢の住民が亡くなっていたという話が珍しくなくなりました。
厚生労働省が提案する人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)が広まれば、その延長線上は終活につながります。なぜなら、人生会議の趣旨は、「もしも」の際に延命治療を受けるか、あるいは自然に任せるかを、あらかじめ家族や医療関係者などと話し合って決めておくということだからです。
(介護コンサルタント
中村寿美子) |
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