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のどの詰まりと誤嚥 世田谷区/56歳男性 |
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70代後半の父は元気で食欲も旺盛です。食べることが何よりの楽しみなのですが、このところ、食べ物をのどに詰まらせることが多くなりました。最近よく聞く誤嚥(ごえん)性肺炎になるのではないかと心配しています。のどが詰まることと誤嚥とは何か関係がありますか?「のどの詰まり」から考えられる病気や予防法を教えてください。
「のどの詰まり」が起きやすい状態には、飲み込みの異常である嚥下障害やのどの炎症、腫瘍などの原因が考えられます。嚥下障害は高齢者にしばしばみられる症状で、脳梗塞などの後遺症によって嚥下の動作のどこかで運動障害や神経障害が生じたり、舌の運動機能が低下したり、嚥下反射そのものが低下することなどによって起こります。のどの問題としては、食道がん、急性咽頭炎、口蓋扁桃肥大(こうがいへんとうひだい)などの疾病の可能性があり、耳鼻咽喉科の診察が必要になります。
のどの詰まりで心配なのが窒息です。成人の窒息は、餅などの食べ物をのどに詰まらせることが最も多く、飲み込む力が弱くなったお年寄りを中心に、日本では年間1万人近くが窒息で死亡しています。また、特に高齢者は、誤嚥に対する注意も必要です。
誤嚥とは、食道を通って胃の中に入らなければならない食べ物や唾液が、誤って気管内に入ることです。通常は気管内に異物が入ると防御反応が働き、異物を外へ出そうとしてむせたり、せきが出たりという反射が起きます。気道の反射が低下している場合には、むせの起きない不顕性誤嚥という状態も考えられます。
また、誤嚥は肺炎を引き起こすこともあります。誤嚥性肺炎とは、細菌が唾液や胃液とともに肺に流れ込んで生じる肺炎です。高齢者の肺炎の70%以上が誤嚥に関係しているといわれています。再発を繰り返す特徴があり、それにより抗菌薬の効かない耐性菌を生じやすく、高齢者の死亡原因として高位に挙げられます。
食事の時のむせや食べ物がのみ込みにくくなったという自覚は誤嚥の重要なサインです。食後にガラガラ声になるのも典型的な徴候です。水を飲んだあとの痰(たん)が絡んだような声は、気道近くまで物が侵入していることを意味します。気道反射が低下している場合には、むせは認められず、さらに肺炎を起こしやすい状況になるので注意が必要です。
ご質問のお父さんの場合、元気で食欲も旺盛だということですが、食事の時間が長くなるといった嚥下障害を疑わせる症状、また肺炎を疑わせるような発熱や、体重の減少などが見られる場合には、早期に診察を受けられることをお勧めします。
福岡歯科大学 高齢者歯科 内藤徹 |
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