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喫煙と心臓病の関係 江東区/53歳男性 |
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わたしは長年たばこを吸い続けています。階段を上る際などに息切れをするほかは、今のところ困ることはありません。煙を吸っているのですから肺に悪いというのは分かるのですが、周囲の人から「たばこは肺だけではなく心臓にも悪い」と聞きました。なぜたばこは心臓にも悪いのでしょうか?
たばこに含まれる有害な要素としては、ニコチン・タール・一酸化炭素が挙げられます。ニコチンは、(1)血管を収縮させる(2)血圧を上げる(3)心拍数を増加させる(4)血管の内皮(一番内側にあり血液と接する部分)を壊す、という悪影響をもたらします。血管の収縮や血圧の上昇はそのまま動脈硬化の危険因子となります。
また、ニコチンには血小板を寄せ集めて固め血栓をできやすくする作用がありますが、血栓ができることによって心臓の筋肉(心筋)酸素供給量は減少します。さらに、心拍数の増加によって引き起こされる心筋の酸素需要と結びつくことによって、不整脈や突然死の原因にもなります。
また、血管の内皮が壊されると、血液中のコレステロールなどの脂質が血管の断面の内側まで入り込んでしまい、プラーク(おかゆのようにもろく壊れやすい動脈硬化組織)を作り出します。これはそのまま動脈硬化の原因となります。プラークは突然破れることがあり、破れた部分に血栓が付着すると冠動脈を詰まらせ、急性心筋梗塞(こうそく)を引き起こすこともあります。
タールは発がん性物質ですし、一酸化炭素は、よく中毒症状としても聞かれます。一酸化炭素は酸素よりも格段にヘモグロビンと結合しやすいため血液が酸素不足の状態に陥り、最終的に動脈硬化をまねくことも。
これらの害は、血管系に悪影響を及ぼすということですので、心臓にとどまらず、脳血栓、くも膜下出血、大動脈瘤(りゅう)、閉塞(へいそく)性動脈硬化症“足の動脈硬化”など全身の血管に関連した病気を引き起こします。症状では現れなくてもたばこの害は体内で蓄積されていますので、これを機に禁煙されてはいかがでしょうか。
ハートケア情報委員会 東海大学医学部付属病院教授 伊苅裕二 |
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