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心臓弁膜症の治療法は 板橋区/76歳男性 |
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わたしは心臓弁膜症=僧帽弁狭窄 (きょうさく) 兼閉鎖不全=と診断されています。病状が悪化した場合、弁置換手術のほかにどのような治療法があるのでしょうか。76歳なので手術は不安です。
心臓の4つの部屋のうち、肺で酸素を渡された血液がかえる左心房と、全身に血液を送るポンプの役割をする左心室の2つの部屋の間にあって扉の働きをする弁が僧帽弁です。
左心室が拡張するとこの僧帽弁が開き、左心房から左心室に血液が流入します。左心室が収縮して血液が大動脈から全身に送りだされる時には、僧帽弁は閉じて左心房へ血液が逆流しない仕組みになっています。
僧帽弁の開きが悪くなり、左心房から左心室への入り口が狭く血液がうまく通過できなくなったものが「僧帽弁狭窄症」です。血液が左心室にうまく流れないために左心房に負担がかかり、病状が進行すると肺うっ血や心不全をおこします。また、左心房が拡大し、血液がよどむため血栓ができ、脳塞栓(そくせん)症などの原因になることもあります。
一方、僧帽弁が完全に閉じずに、心臓が収縮するときに、左心室の血液が左心房に逆流する「僧帽弁閉鎖不全症」を合併する場合があります。
僧帽弁狭窄症は病状がかなり進行するまで目立った症状がないので注意が必要です。軽症から中等症の場合は、薬物治療(血管拡張薬など)で対応しますが、残念ながら完全に治ることはありません。中等症以上の場合、手術が必要になります。
手術は病態によって多少異なりますが、僧帽弁狭窄症が主体で閉鎖不全症が軽度の場合は、開胸せずに先に風船のついたカテーテルを、股(また)の付け根の静脈から挿入し狭くなった僧帽弁で、風船をふくらませて弁を広げるバルーン弁形成術という方法があります。しかし、病変が進んだ高度の狭窄、弁膜などの肥厚・癒着・石灰化が強いもの、左心房内に血栓がある場合はできません。
開胸手術では、僧帽弁に直接切開をする僧帽弁交連切開術、または壊れた僧帽弁を切除し人工弁に取り換える僧帽弁置換術が行われます。
一方、僧帽弁閉鎖不全症が主体で狭窄症が軽度の場合は、弁の悪いところをうまく切り張りし、壊れた僧帽弁を修復する僧帽弁形成術または僧帽弁置換術のどちらかが選択されます。
心臓弁膜症の治療は、病気の進行度や病態、年齢、合併症の状態で変わります。主治医と相談の上、最適の治療法をご選択ください。
順天堂大学 循環器内科 蔵田健 |
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