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  法律 令和5年1月上旬号  

遺言書と遺産分割協議書の関係  千代田区/39歳男性


 遺言書があっても、相続人全員が合意して遺言書の内容と異なる遺産分割協議書を作成した場合、この遺産分割協議書は有効でしょうか。


 遺言執行者がいない場合は相続人間で作成した、遺言書の内容と異なる遺産分割協議書は有効です。  なぜならば、相続は相続人の利害に関することであるから、相続人本人全員が納得している以上、仮に遺言書の記載通りに分割されたとしても、その後相続人間で交換したり贈与したりすることによって、相続人全員の合意で協議書と同じ結果とすることができるからです。

 遺言書の内容を知らずに協議書を作成した場合、合意の意思表示が錯誤によって無効となるときは、当然協議書も無効となるでしょう。

 ただ、民法第908条には遺言で「相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる」と規定されています。遺言書に分割禁止の条項がある場合に、これに反して禁止期間中に遺産分割を定めた協議書は無効となるのか否かという点が問題になります。学説上は争いがあり、無効説もありますが、相続人間に反対者がなく、全員が合意しているならば、有効でよいのではないかと考えます。ただし、遺言執行者がいる場合は同人の同意が必要で、同意のないときは無効となります(民法第1013条)。

 次に問題となるのは、遺言書で「相続させる」となっている場合です。遺言者の死亡により、何の行為も必要なく自動的に遺産は遺言書通りに相続人に移転されるため、そもそも遺産分割の必要はなく、協議書の作成そのものが不要なため、実体が伴わない協議書は無効ということも理論上考えられます。

 しかし、前述の遺言の内容と協議書の内容が異なる場合と同様に、相続人全員の合意があれば、異議を唱える者がいないので、協議書を有効としても問題ないと考えます。この場合も遺言執行者がいるときはその同意が必要となります。同意がないと無効になります。

弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581

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