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再婚の妻に残したい 中野区/86歳男性 |
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私と妻は再婚ですが、結婚して25年になります。今の住まいは私名義の土地40坪と、その上にある建物です。私は妻には大変世話になっているので、私名義の株式と、居住している建物は妻名義としました。土地については、税金の関係もあるので、遺言書を書いて妻に相続させようと考えています。子どもは2人いますが、いずれも独立して生活しています。他に財産は預貯金と、分譲マンション一室を所有して賃貸しています。子ども2人は先妻との間の子ですから、遺産分割でもめることが心配です。相続財産と遺留分はどうなりますか。
既に名義変更して贈与済みの居住建物や株券、それから遺言で相続させようとしている土地が、妻の特別受益となるかという点が問題となります。
従来の民法の規定では、第903条第1項で、共同相続人中に被相続人から遺贈または贈与を受けた者があるときは、その財産の価額を加えたものを相続財産とみなす旨の規定があります。これにより、妻に贈与した建物と株式、さらに遺言で相続させる土地も相続財産に加えて遺産分割することになります。
ところが、平成30年7月6日に成立した民法903条に4項が追加される改正(施行日令和元年7月1日)によって「婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物またはその敷地について遺贈または贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈または贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する」との規定が加入されました(持ち戻し免除)。
しかし、株券は居住財産と関係なく、建物の贈与も改正法施行日以前ですから、相続財産の対象となります。そこで、遺言書に「既に妻に贈与したものは相続財産には含まない」旨を記載しておけば、遺産分割の対象とはなりません。宅地は改正民法施行後ですから、当然含まれません。
ここで注意が必要なのは、前記の内容は、「遺留分の規定に違反しない範囲内で効力を有する」旨の規定(同条3項)があるので、遺産分割に含まれない被相続人の財産も遺留分算定においては相続財産に加えられることになります。その結果、被相続人が有していた全ての財産の4分の1が妻、8分の1が子ども一人分の遺留分となります。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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