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相続人名義の株券 大田区/43歳女性 |
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父が昨年急死し、相続人は母と兄と私の3人です。一周忌も過ぎたので、遺産分割協議を始めたところ、兄名義の株券が証券会社に預けてあることが判明しました。兄は「自分名義の株式は俺のもので、相続財産ではない」と主張して譲りません。私は裁判をしてでもこの株券も相続財産としたいと考えております。どのようにしたらよいでしょうか。
遺産分割の争いを解決する手段としては、まず家庭裁判所へ遺産分割の調停を申し立てる方法があります。しかし調停は「互譲の精神」による話し合いですから、お兄さんが株券は自分の固有財産で相続財産には当たらないことを強く主張する以上、調停には適しません。例え、調停が受理されたとしても、お兄さんの考えが変わらない限り調停は不調に終わり、解決はできません。また、家庭裁判所における審判ということも考えられますが、相続財産の範囲について争いがあるままでは審判の対象とすることはできないので、その確定が必要となります。
お兄さん名義の株式が相続財産であることを法的に確定するためには、地方裁判所において遺産確認訴訟などの民事訴訟手続きをとることになります。この遺産確認訴訟において争点となるのは、株券購入の資金を誰が出したかが重要となります。
「お父さんが保管していた、お兄さん名義の株式」が、これは単にお兄さんの名義を使ったにすぎないということが主張・立証されれば、お父さんの所有で相続財産となります。そうではなく、お父さんが資金を出して買ったが、お兄さんに贈与したことになれば、お兄さんの所有となって相続財産に含まれないことになります。しかし、この場合でもお兄さんは特別受益者となり、持ち戻し計算が認められ、お兄さんは相続財産の先取りをしたことになって、経済的にはあまり意味がないことになります。
一方、お兄さんが給料の全部または一部をお父さんに預けて、それで株券を購入したことが認められれば、お兄さんの所有で、しかも持ち戻しも認められないことになります。この場合でも、お兄さんがお父さんに渡した給料が預けたものではなく、生活費として渡していたとなると、違う結論になります。
実際に株券を購入したお父さんが他界しているので、時系列や生活状況、金額などについて精査し、合理的に判断されることになります。したがって、かなりの時間や労力を費やすことを覚悟する必要があります。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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