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著作権について 板橋区/62歳女性 |
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私は文章を書いたり、ミニコミ誌のようなものを作ったりするのが好きです。これまでも仲間向けに、好きなCDや本、映画の紹介、私のちょっとしたエッセーなどをまとめたミニ新聞を作り、配ってきました。その際、CDジャケットや本の表紙はインターネットで探した画像をコピーして使用していました(あくまで仲間内の新聞ですので、著作権などの問題はないと勝手に判断しました)。私の趣味が伝わったのか、今度、町内会だよりの制作をお手伝いすることになりました。行事のお知らせなど親睦のために作っている冊子なのですが、不特定多数の人が見るような冊子では、どの程度、著作権に配慮しなければならないでしょうか?CDや本の紹介程度なら、本の表紙などを掲載してもかまわないでしょうか? 許可を取るにしても、どこに連絡すればいいのかも分かりません。その辺の事情を教えてほしいのです。
町内会だよりの記事に、紹介するCDや書籍の表紙画像を掲載するにあたり、著作権者の許諾を得る必要があるかというお尋ねです。書評やCD評に、こうした画像を掲載することは、実際よく見受けられるところではあります。
イラストや写真を用いた表紙やジャケットは著作物です。そして、イラストを用いた本の表紙を例に取りますと著作権はイラストレーターもしくは出版社に帰属します。そのどちらかは、両者間の契約によって決まります。
そうすると、表紙の画像の掲載は著作物の利用となり、本来著作者の許諾を得る必要があるように思えます。しかし著作権法は、さまざまな理由からいくつもの例外を定めており、その一つに、著作物を「引用」して利用する場合を定めています。書評に表紙の画像を掲載しているのは、一般にはこの「引用」に該当すると考えられているからだと思われます。
ところで、「引用」の要件として、他人の著作物を引用することの必然性が必要であるとされています。この必然性の観点から考えますと、確かに表紙の画像は読者の視覚に訴え、これがその書籍であると認識させるのに役立ちます。しかし、書籍を紹介するにあたっては、書名と著者名、出版社を掲げれば、紹介する書籍の特定には十分といえます。しかも、書評や紹介記事は、あくまでも書籍の内容である文書に関するものであって、表紙のイラストに関するものではありません。そこで、この必然性を厳格に考えますと、表紙の画像の掲載は「引用」には該当しないということになります。
画像の掲載は、よく見受けられるところではありますが、著作者の許諾を得ずして行うことは、必然性の要件を厳格に考える立場からは問題です。ただし、著作者の不利益になることではないので、黙認されてきたのだと思います。慎重な立場からは、出版社に連絡して、表紙のイラストの著作者を確認し、その許諾を得るべきでしょう。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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