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姑に対する扶養義務 青梅市/53歳女性 |
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私の実家は農家です。父が死亡したとき農業を継いだ兄が農地や建物などをすべて相続し、私と母は何ももらいませんでした。ところが、その後兄も死亡し実家の財産はすべて兄嫁とその子どもたちが相続しました。現在、母が体調不良ということもあって、兄嫁はマンション住まいの私の所へ母を連れてきたきり、引き取ろうとしません。母は「もともと自分の家なのに帰れない」と言って悲しんでいます。兄嫁には母の面倒をみる責任はないのでしょうか。
扶養義務を負うのは、祖父母、子、孫といった直系血族、および兄弟姉妹の相互間が原則です(民法877条1項)。嫁と姑(しゅうとめ)は、法律上一親等の「姻族」ということになります。姻族間では当然に扶養義務があるのではなく、家庭裁判所で特別な事情があると認められたときに限り、三親等の範囲内の親族にも扶養義務を負わせることができます(同条2項)。
したがって、あなたの場合、兄嫁に姑の扶養義務を負わせるためには、特別の事情が必要となります。
この特別の事情は、具体的な状況に応じて、家庭裁判所が判断して決めます。例えば「家族として同居し、生計も一緒であった」とか、「親族として特別の待遇を受けていた」とか、「家業を継いで財産も受け取っていた」などです。また「他の親族の中に扶養義務者が居ない、または居ても扶養能力を有していない」などの諸事情が判断の材料とされると思います。
あなたの場合は、嫁と姑は最初から同居していて、生計も共にし、農業を引き継ぎ、農地などの財産も夫からにせよ相続しています。見方によっては実子同等かそれ以上の恩恵を受けているともいえるため、特別事情に当たるとして、姑に対する扶養義務が認められる可能性はあると思います。
一方で、あなたは母の直系血族として母を扶養する義務を負い、その義務は当然兄嫁に優先しますから、兄嫁はあなたの所へ母を連れてきたものと思われます。あなたに母を扶養する能力があるのでしたら、兄嫁にあなたの母を扶養する義務を負わせるのは難しいとも考えられます。要は、あなたの扶養能力と兄嫁の特別事情を、どのように判断するかによると思います。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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