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貸金の消滅時効 渋谷区/47歳男性 |
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3年程前、兄がマンションを購入する際に、「頭金が足りないから100万円ばかり貸してほしい」と言われ、返済期日を定めずに100万円を貸しました。
最近時効の期間が短くなったと聞き、不安になり、兄に1カ月以内に100万円を返してくれるよう催促しました。改正された法律ではどんな点が変わったのでしょうか。私の兄への貸金の消滅時効はどうなるのでしょうか。
民法の改正について順を追って説明します。
(1)改正民法は2017(平成29)年5月26日に成立し、同年6月2日に公布されました。施行日は公布日から3年を超えない範囲内に政令で定めるとなっていて、それまでは現行法が適用されます。
(2)消滅時効の期間は、現行法の職業別による短期消滅時効制は廃止され、債権については一律に「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間」「権利を行使することができる時から10年間」となりました。
(3)この5年、10年の起算日ですが、債権の場合は、弁済期日から数えることになります。あなたの場合、もともと返済期日を定めていないので、起算日は相当期間をおいて支払日を定めた日となります。あなたは1カ月以内に返済するよう催促したので、その催促が口頭(電話も含む)の場合はその日の翌日から、手紙など書面の場合は送達された日の翌日から、数えてそれぞれ1カ月後に当たる日が起算日となります。あなたの場合、支払いを催促しているため、「知った時」に当たるので、1カ月後から5年が経過すると時効が完成します。
(4)現行法には時効の中断という制度があります。中断とは、時効の進行中に一定の事由が発生し、それまでの時効期間が無意味になることです。中断事由として「請求(裁判上の請求)、差し押え、仮差し押えまたは仮処分、承認」が定められています。このような場合には、その中断事由が終了した時から新たに時効が始まります。これに対し改正法では、時効の「更新」として、中断と同一の効力を認めていますが、更新できる場合がかなり限定的となっています(民法147条2項、148条2項)。
(5)現行法では、「中断」とは別に、時効の進行が一定期間猶予される「停止」の制度もあります。進行が一時停止する場合として、「催告、夫婦間の権利、未成年者、成年被後見人、相続財産等」の場合を挙げて、6カ月間の時効の停止を認めています。これに対し改正法は、時効の「完成猶予」として、同様の場合以外にも「裁判上の請求、支払い督促等(147条1項)、強制執行、担保の実行等(148条1項)、さらに仮差し押さえ、仮処分(149条)」も含まれます。停止期間は同様に6カ月です。また、天災などによる停止については、現行法は2週間としていますが、改正法では3カ月となっています。
以上が時効についてのだいたいの改正点です。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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