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民法改正、賃貸借契約への影響は? 江戸川区/72歳男性 |
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私はマンションを所有していて、個人または法人の連帯保証人付きで25室を賃貸しています。聞くところによると、このたび民法が改正され、賃貸借契約の保証にも影響があるとのことですが、どのような点が改正され、それはいつから発効されるのでしょうか。
民法改正法は、昨年5月26日に成立し、6月2日公布され、施行日は一部の規定を除き、公布日から3年を超えない範囲において政令で定める日とされています。
改正の内容は実に多岐にわたり、建物賃貸借契約についても影響があります。特に、保証人との関係については、重要な改正がありました。
今までは保証人が個人(自然人)である場合には、根保証規制の対象となっていませんでした。ところが、今度の改正により、賃貸借契約の保証も、賃貸借契約が続く限り継続的に保証するものであって、しかもその間に発生する不特定の債務を包括的に保証するものですから、根保証契約に該当するため、根保証規制を受けることになったのです。その結果、契約書に保証する極度額を記載することが必要となり、極度額の記載のない保証契約は無効となります(465条の2第2項)。
建物賃貸借の場合、賃料はもちろんのこと、賃貸借契約から発生する賃借人の一切の債務が保証の対象となるので、原状回復費用や不法行為による損害賠償など、保証人が予想しない金額が発生する恐れがあります。そこで、不測な保証額を防ぐため、あらかじめ保証の限度を極度額として契約書に記載しなければならないことになったのです。ただし、保証人が会社などの法人の場合は、このような規制は及ばないので、極度額の記載がなくても無効とはなりません。
次に挙げられるのは、やはり個人の保証人保護のために規定された、賃貸人に対する保証人への情報提供義務です。その一つは保証人から請求のあったときは、主たる債務(例えば賃料)の支払い状況に関する情報提供義務(458条の2)、もう一つは主たる債務者(賃借人)が「期限の利益」を喪失した場合の情報提供義務です(458条の3)。これらは、保証人が現実に負担する保証債務がどのくらいになるかを正しく理解できるようにしたものです。そのほか、原状回復の範囲(621条)や、敷金の返還時期(622条の2)なども明確になりました。
なお、賃貸借契約における個人保証契約には、公正証書による保証意思の表示は必要ありません。また、改正法施行後の新しい契約はもちろんのこと、契約を更新した場合も適用となります。
弁護士 山下英幸
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