|
内縁関係と借家権相続 渋谷区/58歳男性 |
|
|
借地権や借家権が相続財産となることは分かっておりますが、法定相続人ではない内縁関係の妻や事実上の養子が、借家権を相続することはできるのでしょうか。
この問題は借家人に相続人がいる場合と、相続人がいない場合とに分けて考える必要があります。借家人に相続人がいない場合は、立法的に解決されています。1991(平成3)年に廃止された旧借家法第7条の2で、「賃借人ガ相続人ナクシテ死亡シタル場合ニ於イテ其ノ当時婚姻又ハ縁組ノ届出ヲ為サザルモ賃借人ト事実上夫婦又ハ養子ト同様ノ関係ニ在リタル同居者アルトキハ其ノ者ハ賃借人ノ権利義務ヲ承継ス」とされていました。また、92(平成4)年に施行された、借地借家法第36条1項にも同様な規定があって内縁の妻や事実上の養子に賃借人の権利の承継を認めています。
問題になるのは相続人がいる場合です。法律上では規定がなく、裁判例によると、借家権が相続によって相続人に承継されたことを認めたうえで、内縁の妻や事実上の養子については、家主との関係で相続人の借家権の援用を認め、その居住の確保を図っております。
このような考え方は、被相続人の生前においては、同居の内縁の妻や事実上の養子が借家権の援用によって、居住できたのであるから、被相続人の死亡後も、相続により相続人が取得した借家権を援用できるとしたものです。
家主と相続人が賃貸借契約を合意解除したときは、借家権そのものが無くなり、援用することはできないことになります。そこで、合意解除を信義誠実の原則に反する無効な解除として、援用した内縁の妻や事実上の養子に対抗できないとした裁判例があります。また、相続人が借家権を放棄した場合についても、この放棄は共同生活をしている内縁の妻や事実上の養子の生活を奪うもので無効とした事例もあります。
しかし、相続人が家賃の支払いを怠ったことにより、契約を解除されたときは、内縁の妻や事実上の養子は家主の明け渡し請求には応じなければなりません。
内縁の妻や事実上の養子に借家権の援用が認められるようなケースで、家主が建物の明け渡し請求をしたときは、権利の乱用として明け渡し請求は認められないとされています。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
| |
|