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民泊をやめさせたい 大田区/70歳男性 |
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私は分譲マンションの区分所有者です。他の区分所有者の中に、「民泊」(自宅に旅行者などを宿泊させること)をしている人がおり、ゴミ出しや安全面で不安があります。当マンションの管理規約12条に「専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」とありますので、これに基づいて民泊の中止を求めたいのですが、できますか。
国土交通省が作成したマンション標準管理規約12条に定めている「住宅」に民泊が含まれるか否かについて、国土交通省と、政府が進める国家戦略特区ワーキンググループの委員で意見が分かれています。
国土交通省の見解では民泊は住宅には含まれず、この規約のあるマンションで特区民泊を実施する場合には、管理規約の改正が必要になるとしています。一方、ワーキンググループの有識者委員からは、「むしろ特区民泊は標準管理規約上の住宅に含まれるという見解を積極的に打ち出すような通知を発出すべき」という意見が出ています。
双方の主張にはそれぞれ理由があると思われます。国土交通省が指摘するように、確かに民泊は短期の滞在でホテルに泊まるのと同じで、しかも民泊によって利益を得るのが目的でマンションを利用するのだから、常識的にみて住宅とは異なるといえます。一方の有識者委員の見解では、一般的に使用目的の分類では住居、事務所、店舗、倉庫などに分けられるので、(その中の分類では)民泊も住まいとして利用されるので住宅にあたるとしています。これはこれで理解できます。
まだ裁判例もないようなので、今後のことを考えると、できれば規約に「不特定または多数の区分所有者以外の者を専有部分に宿泊させ、またはこれらの者に貸してはならない」というような条項を追加するのがよいと思います。現段階では、管理規約を理由として民泊をやめさせるのは(見解が分かれているため)争いになるのは間違いないようです。
しかし、民泊によってゴミ問題や、安全上の不安が著しいような場合には、何らかの対応が必要になってくるでしょう。建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第6条1項に「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」と規定されています。また、同法第57条1項では「他の区分所有者全員、または管理組合法人は、その行為を停止し、その行為の結果を除去すること等の請求をすることができる」旨規定しています。これらの条項により、「共同の利益に反する行為」として、民泊の停止を求めることも可能な場合があると思います。
弁護士 山下英幸
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