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内縁の夫との関係 足立区/65歳女性 |
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私は、10坪ばかりの建物(築60年以上)を所有して飲食店をやっておりました。店によく来ていた常連の客と親しくなり、店の2階で同居し、内縁関係となりました。そんな折、地主から土地明け渡しの話がありました。
ところが、内縁の夫が私に無断で勝手に地主と話を進め、私の知らない間に話をまとめ、立退料を受け取り行方不明となりました。夫は私の預金通帳も持って行って、そのほとんどを銀行から引き出しています。私と夫や地主との関係はどうなるのでしょうか。
ご相談には、民事上と刑事上の問題が含まれていると思います。まず民事は、あなたと地主との関係です。あなたが地主との明け渡し交渉についての代理権を内縁の夫に与えていないのなら、夫の行為は無権代理として効力を有しません。立ち退きの話もなかったことになり、改めて立ち退きの交渉や立退料の請求もできます。
しかし、内縁関係であなたの実印を夫に預けていて、その使用を認めていたり、買い物や役所、病院などの手続き関係全てを任せていたりすると問題となります。地主から見るとあなた方は夫婦で、あなたが立ち退きの交渉や立退料を受ける代理権を夫に与えていたと信じた場合には、代理行為として有効となる場合もあります。地主もあなたに直接確認しなかったり、委任状も取っていない場合は、地主にも手落ちがあったことになります。
あなたと夫との関係については、夫に代理権があったことになると、夫に対して立退料相当額と預金から引き出された金額とを損害賠償として請求できます。しかし、内縁の夫が行方不明なら解決は難しいと思います。
いずれにしても断定的に判断することは困難で、事実関係によって結論も異なるので、裁判を起こして裁判所の判断を待つ事案だと思います。
次に、刑事上の問題ですが、夫の行為が無権代理となれば、夫はあなたの代理人だと偽って、地主から立退料をだまし取ったのですから、詐欺罪となります。代理権があった場合はだましていないので犯罪とはなりません。
夫とあなたとの関係では、夫に代理権があって、地主との立ち退きが有効だとすれば、立退料について横領罪が成立します。また、あなたの預金通帳を持ち出したのは窃盗罪となり、その通帳から預金を引き出した行為も別の窃盗罪となります。配偶者、直系血族または同居親族間で罪を犯した者は、刑を免除されますが、内縁の配偶者は該当しないので、横領罪、窃盗罪での処罰は免れません。
早急に警察に被害届を出して、夫の所在を捜し出すのが先決であると考えます。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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