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家賃滞納と自力救済 江戸川区/31歳男性 |
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自動車事故を起こしてしまった関係で、資金繰りが苦しくなり、マンションの家賃を2カ月分滞納してしまいました。先日帰宅するとドアに張り紙がしてあり、そこに「家賃をすぐ払え、そうでなければ部屋を明け渡せ」と書いてありました。中に入ると、いつもそろえてあるサンダルが乱れていて、誰かが中に入った形跡がありました。そこでマンションの管理会社に電話したところ、居住しているか否かを確認するために入ったとのことでした。このような張り紙や、無断での立ち入りは認められることでしょうか。また、契約書に家賃の支払いを怠ったときは、承諾を得ることなく立ち入ることができる旨の規定がある場合、この規定は有効でしょうか。
2カ月分の家賃の支払いを怠ったからといって、マンション管理会社が貸室のドアに家賃の催促や明け渡しを求める張り紙を張ることは違法です。
ましてや承諾なく部屋に立ち入ることは借家人の平穏に生活する権利を侵害するもので、不法行為となります。刑事責任としても、住居侵入、名誉毀損(きそん)、場合によっては脅迫などが適用される可能性があります。
裁判例でも、ドアに張り紙をしたり、ドアの錠を取り換えて入れなくしたり、無断で室内に入ったような事案に関して、「このような手段による権利の実現は、法的手続きによったのでは権利の実現が不可能または著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情がある場合」とはいえないので、違法な行為として(管理会社側に)慰謝料の支払いを命じております。
また、契約上賃料不払いの場合に無断で室内への立ち入りが認められていたとしても、このような特約は公序良俗に反して無効であるとしています。マンションなどの賃貸借において借り主に契約違反があった場合、法による手続きをとらずに私力で賃料の支払いを強制したり、退去を強制したりする行為を「自力救済」といいます。
日本は法治国家として、法律によらない自力救済は、原則として禁止されています。例外的に権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能または著しく困難であると認められる「緊急やむを得ない特別の事情がある場合」においてのみ、その必要な限度を超えない範囲で許されるとされています。
あなたのケースでは緊急性は認められないので、いずれも自力救済は認められず、管理会社の行為は不法行為となります。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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