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事業用定期借地権とは 北区/63歳男性 |
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私鉄の駅前の土地100坪を借りて、建物は倉庫兼店舗として使用しています。このほど、大手コンビニエンスストアから「建物を建て替えて貸してほしい」との申し入れがありました。建物の建築費は保証金として出してくれるとのことです。そこで地主に話したところ、建て替え承諾料1200万円、契約更新料1000万円、地代は現在の6倍との条件が出されました。とても応じられないと断ると、承諾料、更新料なし、地代も3倍でよいが、期間は事業用定期借地権として20年間で、延期についてはその時相談するとのことです。応じても問題はないでしょうか。
事業用定期借地権は、専ら事業の用に供する建物(居住用を除く)の所有を目的とする借地権です。「借地借家法第23条1項の規定による事業用定期借地権」と「借地借家法第23条2項の規定による事業用定期借地権」の2種類があります。どちらも公正証書によって契約を結ぶ必要があって、公正証書によらない場合の契約は無効です。
両借地権の最も異なる点は第23条1項の場合は存続期間が「30年以上50年未満」であるのに対し、同条2項の場合は「10年以上30年未満」であることです。地主からの提案だと、存続期間を20年とするとのことですから、同条1項ではなく、同条2項による事業用定期借地権であることが明らかです。
地主から提案のあった同条2項の事業用定期借地権の場合は、以下に示す規定が適用されない借地権となります。適用されない規定は、同法3条(借地の存続期間)、同法4条(借地権の更新後の期間)、同法5条(借地契約の更新請求等)、同法6条(借地契約の更新拒絶の要件)、同法7条(建物の再築による借地権の期間の延長)、同法8条(借地契約の更新後の建物の滅失による解約等)、同法13条(建物買取請求権)、同法18条(借地契約の更新後の建物の再築の許可)…。以上の通り、借地人にとっては最も厳しい借地権となります。
しかし、この借地権の場合でも、「契約後に期間を延長する契約」や、「期間満了後に更新契約を締結すること」および「当初の契約時において期間満了の場合に借地権者の請求により更新できる」旨の合意は、総期間が30年未満である限り有効であると解されています。ただ、この点について地主が応じる可能性は極めて低いと思います。
以上のことを考えると20年後、地主に無条件で更地にして返還するのなら地主の提案に応じてもよいと思います。そうでない場合は、非訟事件として裁判所に申し立てをし、地主の承諾に代わる許可を受けるとよいでしょう。もちろん適正な承諾料は必要です。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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