|
遺留分の減殺請求 中野区/63歳男性 |
|
|
昨年の7月に父が亡くなり、遺言書を兄から見せてもらいました。それによると、私の遺留分が侵害されていることが分かりました。遺留分減殺請求をしたいのですが、誰に対してどのような方法でしたらよいでしょうか。兄に対して遺産分割の請求をしていますが、これで減殺請求となるでしょうか。また、遺産のうちどの財産を欲しいと特定して請求することができるでしょうか。
「遺留分」とは、一定範囲の相続人に対して最低限相続で保証された財産のことです。遺留分減殺請求権は、相続の開始および、減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったときから1年間で時効消滅します。
その行使の方法は、(1)相続財産をたくさん取得して他の相続人の遺留分を侵害している者に対して(2)(後日の争いを避けるため通常は)内容証明郵便で「遺留分を侵害しているので、減殺請求する」旨の通知をすればよいです。もちろん口頭でも手紙でも後日立証できれば効力を有します。
次に遺留分を侵害している者に対して、遺産分割協議の申し入れや、遺産分割の調停、審判の申し立てをした場合に減殺請求の意思表示が含まれるかが問題になります。原則的には、遺産分割と遺留分減殺とは、要件・効果が異なることから含まれないとするのが最高裁判所の判決です。
しかし、被相続人の全財産が一部の相続人に遺贈されているような場合には、遺留分減殺をしないと分割請求ができません。そのため特別の事情がない限り、その申し入れには遺留分減殺の意思表示が含まれていると解するのが相当である、としています。
次に、複数の相続財産があって、それらを一人が相続した場合に、遺留分減殺請求者が減殺すべき対象物を選択することができるかという問題です。かつては、任意に選択を認める判例もありましたが、現在は選択を認めないとする否定説がほとんどで、学説の多くも否定説です。
その理由はいろいろありますが、(1)任意の選択を認める民法上の根拠がないこと(2)財産を取得した側の事情が無視されること(3)減殺請求後に起こる遺産分割協議について、一方的に先取りを認める結果となって不合理である、などが挙げられています。
なお、遺留分減殺請求権が行使されると全相続財産について共有となるので、(分割の合意が成立しないと)最終的には共有物分割の手続きによって解決することになります。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
| |
|