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賃貸借契約の解除 国立市/70歳男性 |
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私は10室あるアパートを所有して貸しておりますが、賃貸借契約は市販の契約書を使っております。この契約書の中に「賃料の支払いを1カ月遅滞したときは、催告することなく契約を解除できる」という条項がありますが、有効でしょうか。また、「契約期間中であっても3カ月前に通告すれば契約を解約することができる」旨の特約をした場合はどうでしょうか。
賃料の不払いは、債務不履行ということになりますが、賃貸借契約の場合は、単に債務不履行があっただけでは契約の解除は認められません。その不履行により契約を継続し難い事情、つまり賃貸人と賃借人間の信頼関係の破壊となる背信行為がある場合のみ契約の解除が認められるのです。
このように考えると、1カ月の賃料不払いでは信頼関係の破壊とはいえないとされています。ましてや無催告となるとなおさらです。1カ月の不払いとは、例えば月末に支払う約束のものを翌月の1日に支払っても1カ月の不払いとなるので、このような条項は借地借家法第30条で無効とされます。
ただ実務上は、無催告解除の特約そのものは無効ではなく、不払い期間と併せて、不払い金額も賃料の3カ月分くらいに達したときに、無催告解除が認められるとされています。したがって、安全のためには催告のうえ契約を解除するのが良いでしょう。
次に、中途解約の特約ですが、この場合は賃貸借契約に期間の定めのある場合とない場合とで若干異なります。期間の定めのある場合では、民法上は契約の解除は賃貸人・賃借人のいずれも、解除権の留保として3カ月の期間をおいて解除することができます。
しかし、借地借家法の適用がある建物賃貸借契約では、中途解約の特約がある場合でも賃貸人からの解約の申し入れには6カ月間の猶予期間と正当事由が必要とされています。特約がない場合は解約できません。賃借人からの解約の申し入れは特約があればできますが、特約がない場合は事情変更などの特別な理由がない限り解約はできないでしょう。
契約期間の定めのない場合は、中途解約の規定の有無に関係なく賃貸人は正当事由があれば、6カ月の期間をおいて解約の申し入れができ、賃借人の場合は、正当事由と関係なく3カ月の期間をおいて解約ができます。
なお、法定更新の場合は期間の定めのない契約となります。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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