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家主の行為に疑問 墨田区/58歳男性 |
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私はこのほどリストラで会社を解雇されました。現在、マンションの家賃支払いが苦しくなり2カ月分滞納しております。マンションの敷金は賃料の3カ月分です。ある日部屋に戻ってみると、玄関から入った所に家主からの賃料の催告書が置いてありました。私が不在のときに家主が入り口のドアの鍵を開けて入ったことが分かりました。このような家主の行為は許されるものでしょうか。また、契約書に「賃料の支払いを怠ったときは無断で立ち入ることができる」と規定されている場合、このような規定は有効なのでしょうか。
家主の行為は特別な事情がある場合を除き、違法となり許されません。また、契約書上賃料不払いを理由に無断立ち入りが認められていたとしても、その規定は無効です。賃借人の承諾がなく、また法的手続きをとることなく賃貸人が自分の力でその権利を行使して、賃借人の平穏に生活する権利を侵害することを「自力救済」といいます。このような自力救済は原則として禁止されています。
例外的に自力救済が認められるのは次のような場合です。「権利に対する違法な侵害に対抗して、現状を維持することが、不可能または著しく困難であると認められる、緊急やむを得ない特別の事情が存する場合において、その必要の限度を超えない範囲内で許される」とされています。
賃料の不払いの場合は現状維持の必要もなく、緊急性もなく、敷金もあるので、他人の住居に無断で立ち入ることは認められません。したがって、自力救済を認めるような契約条項は、公の秩序または善良の風俗違反として民法第90条により無効となります。
賃貸人が賃借人に無断で居室の鍵を開けて入居した行為は不法行為となり、その結果、賃貸人に損害賠償義務が発生します。このような場合の損害は物的な損害ではなく、賃借人が受けた精神的な損害、つまり慰謝料ということになります。
また、居室に入らなくても入り口のドアに「賃料払え」とか「貸室を明け渡せ」などの書面を貼ることも自力救済禁止に違反して、不法行為となります。
弁護士 山下英幸
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