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遺産分割が進まない 調布市/62歳男性 |
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私は3人兄弟の次男です。母は既に数年前に亡くなっており、半年前に父も死亡しました。父所有名義の土地建物には、父と同居していた長男家族が住んでおります。父の遺言はなく、遺産分割の話も進んでおりません。私と弟が相談して、兄に対し父名義の建物の明け渡し請求、または賃料相当額を不当利得として請求しようと思っていますが、できるでしょうか。
いずれの請求もできないと考えます。
相続開始によって相続財産は、相続人の共有となりますが、相続法には単純承認後、遺産分割が終了するまでの財産について規定がないので、物権法の共有に関する規定に従うことになります。それによると、共同相続人はその相続分に応じて相続財産を使用することができるのです。
次に財産使用の範囲についてです。保存行為(建物の修理、共有名義の登記、不法占拠者の排除、時効の中断など)は、各相続人が単独でできますが、管理行為(賃料の請求、明け渡し請求、現金を預金するなど)は、相続人の相続分による多数決で決定され、また処分行為(売却、贈与、担保権の設定、農地から宅地への変更など)は、相続人全員の同意が必要とされます。したがって、あなたと弟さんが合意すれば、過半数の持ち分となり、保存行為はもちろんのこと、管理行為もできるので、お兄さんに対して建物の明け渡しや賃料請求も可能のように思われます。
しかし、お兄さんも共有者として建物を使用する権限がある上に、賃料を支払わずに被相続人である父親と同居していたのですから、父親との間で建物に対して相続開始時を始期とし、遣産分割時を終期とする、建物を無償で使用することができる使用貸借契約が成立していたものと推認されるのです。
そのため、多数持分権者から少数持分権者に対して、共有物の明け渡しを求めるためには、契約期間の満了、すなわち遺産分割協議が成立した後でないと明け渡しを求めることはできないのです。同様に賃料についても使用賃貸借は無償、つまり賃料を支払わずに使える契約なので、不当利得問題は生じないため、賃料相当額の請求もできないことになります。問題を解決するためには早く遺産分割協議を成立させることが必要です。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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