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建物賃借権の無断譲渡 板橋区/58歳男性 |
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私は5階建てのビルを所有していて、そのうちのワンフロアを株式会社に貸しています。最近、契約した当時の社長の姿が見られないので郵便物を見たところ、代表取締役の名前が代わっていました。問い合わせると交代したとのことです。契約書では、代表者が代わったときは、貸主に届け出ることになっています。このような場合、契約の解除はできるでしょうか。
賃借人である会社の代表者の交代が、賃借権の譲渡に当たるかどうかということが問題となります。また、仮に譲渡に当たるとしても、このような場合、直ちに契約解除事由に該当するかどうかを検討する必要があります。
会社のような法人は、自然人とは異なる法人格が認められていて、個人事業とは別の経済的活動や信用が与えられております。形式的に判断すると法人格が同じである以上、代表者が代わったからといって、法人格の変更とはならないので、賃借権の譲渡とはいえないでしょう。裁判例においてもそのように判断されています。
しかし、会社の規模にもいろいろあって、実質的には個人会社で、しかも、株式が譲渡された、いわゆるオーナーの交代となる場合には、会社の役員、経営方針、会社の規模などが変わることもあります。その際、賃貸借契約における賃貸人と賃借人間の信頼関係が悪化すると判断される場合には、報告義務違反などと相まって、契約解除事由となり得ることもあるでしょう。要は実質的にみて、代表者の交代が賃借人の変更に当たり、かつ賃貸人との信頼関係が壊されるか否かによって、判断されます。
次に、代表者変更による貸主への届け出義務の点ですが、この届け出が単なる形式的なもので賃貸人の同意を必要としないものか、そうではなく、届け出に賃貸人の承認を得る必要があるのかによって結論は異なってきます。一般的には「届け出」とあるのは承認までは含まれないと思います。この場合も、賃貸人と賃借人間の信頼関係破壊の有無が基礎となるため、届け出義務違反のみで契約解除を認めるのは難しいと思います。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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