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  法律 平成23年1月号  
隣家の工事で損害  墨田区/49歳男性

 隣の人が木造の建物を壊して4階建てのビルを建てました。その工事の際の震動によって、わたしの家(2階建て)の屋根や壁に亀裂が入りました。このほか工事中の騒音・震動・粉じんなどによる損害を受けました。工事は建設会社が請け負い、下請け会社が一部を担当していたようです。わたしは誰に損害を請求したらいいのでしょうか。


 隣のビル建築に関係したのは、建築を注文した所有者(以下「甲」という)、建築を甲から請け負った建設会社(以下「乙」という)、さらに乙から工事の一部を請け負った下請け会社(以下「丙」という)の3者ということになります。

 乙は甲の依頼に基づいて工事を完成し、これを甲に引き渡す義務を負っているのだから、乙の不注意によってあなたに損害を与えたのであれば、その責任は乙にあって、甲には損害を賠償する責任はありません。ところが、甲の設計に従って工事をした場合のように、甲の注文や指図に不注意があって損害が発生したような場合には、甲にも損害賠償義務が発生します。甲・乙の双方に過失があって、それが重なって損害が発生したような場合には共同不法行為として、甲・乙両者に責任があります。

 一般的には請負工事の場合は、工事によって発生した損害については請負会社に責任があるとみてよいでしょう。

 次に乙と丙との関係です。乙が請負契約に基づいて丙に工事の一部を下請けした場合には、その工事によって発生した損害については丙に賠償責任があります。例えば、丙が基礎工事を請け負い、その工事による損害の場合は、丙の責任となります。しかし、甲の設計図や仕様書に基づき、甲や乙の指図によって丙が工事をしたような場合には、甲や乙の責任も問題となってきます。また、乙と丙とが雇用関係にあるときは、丙の不注意で発生した損害でも乙は使用者として責任を負います。

 以上のように、建築工事による賠償責任は、工事の実態によって責任を負う当事者や範囲も異なるでしょう。それに被害者側としては、工事と損害との因果関係を立証することが重要です。それによって、甲・乙・丙のいずれか、あるいは共同して責任を負うのかも明らかとなります。

弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581

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