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マンションの立退料 中野区/65歳男性 |
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わたしは5年前から中古マンションの1室を借りて住んでおりますが、半月くらい前にこのマンションの新しいオーナーという人が訪ねて来ました。そして、マンションを建て替えたいから明け渡してもらいたいと言われました。立退料として、金75万円を支払うということです。賃料は1カ月15万円です。75万円は妥当な金額でしょうか。また、裁判所から「このマンションが競売開始となったので、部屋の間取りを調査したい」と連絡がありましたが、これはどういうことでしょうか。
立退料の金額は、相場があって無きに等しいのが実情です。というのは、建物の立退料は、建物の老朽化の程度、建物の立地条件、契約の内容、特に面積や賃料、双方の必要性の強弱、明け渡し猶予期間、需要と供給の関係など、さまざまな要素によって異なります。一概に「高い安い」を決めることは困難です。
特に近年のように不動産市場が冷え込んでいる時には、かつてのバブル期のように“地上げ屋”が横行したり、“ごね得”が認められたりした時代とは異なります。しかし、最低基準としては、貸主の都合による明け渡しですから、転居先に支払う費用や引っ越し費用、それに精神的苦痛に対する慰謝料的なものが含まれるのは当然でしょう。ですから、75万円という金額も、不当とはいえないかもしれません。
あなたの場合、気になるのは、マンションの所有者が変わり、競売が開始され、裁判所の執行官が部屋の間取りを調査したい旨の連絡があったことです。執行官が調査に来るのは、競売手続きにおいて、最低競売金額を決める必要があるからです。借りたのは中古マンションですから、あなたが借りるより前に抵当権あるいは根抵当権が設定されていて、この抵当権などによって競売の申し立てがあったような場合には、あなたの賃借権は抵当権などに対抗することができないことになります。
したがって、競売手続きにより、競落した新しい所有者からマンションの引き渡しを求められた時は、立退料の支払いがないまま、引き渡しに応じなければならなくなります。もちろん、交渉次第で引っ越し代くらいの支払いは可能かもしれません。
そこで、このマンションの登記事項証明書(登記簿謄本)をとって、権利関係を確認のうえ交渉することをお勧めします。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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