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無断で離婚届を提出されたら? 渋谷区/53歳女性 |
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わたしは結婚して26年になりますが、夫との間に子どもはおりません。夫にはほかに女性がいて、夫とその女性との間に5歳の子どもがいます。「子どもが来年小学校に入学するとき、両親がそろっていないとかわいそうだから離婚してほしい」と夫から再三言われているのですが、わたしは応ずるつもりはありません。しかし夫が一方的に離婚届を出す恐れがあります。これを防ぐ方法はないでしょうか。
わが国の離婚手続きは極めて簡単で、離婚届出書を提出するだけで成立します。この届出書には印鑑証明の添付などの意思確認の手段もありません。印鑑もいわゆる三文判でよく、証人2人の署名押印があれば、届け出は受理されます。
したがって、離婚手続きは夫婦の一方または双方がまったく知らない間に受理されることもありえます。このような本人の意思に基づかない届け出は法的に当然無効であるばかりでなく、このような無効な届け出をした者は刑事上、公正証書原本不実記載、同行使罪として重い刑事責任を問われることになります。
ところが、無効な届けであっても受理されて戸籍に記載されてしまうと、これを消除するには、離婚無効の確定判決または審判を得たうえで、戸籍訂正の申請をしなければなりません。
そこで、このような届け出を防ぐために、無断で勝手に作成されて提出された届け出を受理しないような予防的な措置が戸籍実務に求められています。これが協議離婚届出不受理の申し出制度です。この制度は法律上規定されているものではありませんが、行政サービスとして民事局長の通達で一般に定着しています。
この申し出は、本籍地の市区町村長に対して行います。その有効期間は6カ月以内とされ、それ以上の時は、再度申し出が必要です。
この不受理申し出は当然取り下げることもできますが、それには取り下げ書に本人の自署と不受理届出書に使用したものと同じ印鑑を使用することが必要とされています。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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