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第一只見川橋りょう |
福島県柳津(やないづ)町や只見(ただみ)町など同県南西部の奥会津。清流やブナの原生林など豊かな自然に恵まれた同地方には、「日本屈指の秘境路線」といわれるJR只見線が走る。同線沿線は、春の新緑、夏の深緑、秋の紅葉、冬の雪景色…と、四季折々のさまざまな風景が魅力だ。行楽シーズンを前に、癒やしの風景や地元グルメを求めて“ローカル線の旅”に出た。
多彩なフォトスポット
只見線は、福島県の会津若松駅と新潟県の小出駅を結ぶ全長約135キロ(36駅)の路線。豪雪地帯を走る貴重な住民の足として活躍していたが、2011年7月の新潟・福島豪雨で土砂崩れや線路の崩壊、橋りょうの流出などの甚大な被害を被った。被害が集中した会津川口—只見駅間は約10年もの間、不通となり、22年10月にようやく全線が開通した。
車窓からは、日本の原風景のような景色が次々と現れ旅情をかき立てられる。列車が通ると、沿線住民が手を振って歓迎してくれるのも旅の気分を盛り上げてくれる。
只見線の自慢は、鉄道ファンならずとも思わず写真を撮りたくなる多彩なフォトスポットだ。只見川に架かる8つの橋りょうはそれぞれ個性的で“撮影心”をくすぐる。特に人気で只見線の代名詞的存在なのが会津桧原—会津西方駅間の「第一只見川橋りょう」だ。只見川の川面に映る橋りょうや雄大な自然のコントラストが美しく幻想的な光景に息をのむ。このほか、トラス橋の「第四只見川橋りょう」(会津水沼—会津中川駅間)や、東北電力・本名ダムと並行して架かる「第六只見川橋りょう」(本名—会津越川駅間)などフォトジェニックなスポットが盛りだくさん。
橋りょうなど只見線鉄道施設群は21年9月、公益社団法人土木学会から保存すべき「選奨土木遺産」として認定されている。

つきみが丘町民センター(Tel.0241・42・2302)の「会津柳津ソースカツ丼」。ほかにも町内の食堂で食べられる |
“赤べこの地”で地元グルメ
車窓の風景だけでも旅情に浸れるが、同路線には途中下車したくなる駅も多い。会津柳津駅(柳津町)は“奥会津の玄関口”。同駅から徒歩約10分の名刹(めいさつ)・圓藏寺(えんぞうじ)は、「赤べこ」伝説発祥の地だ。400年ほど前、大地震で倒壊した寺の再建を手伝った赤牛(べこ)の伝説から、福を呼ぶ「赤べこ」として親しまれるようになったという。同駅には張り子工房が併設され、民芸品「赤べこ」の絵付け体験ができる。
おなかがすいたら、ぜひ「会津柳津ソースカツ丼」を堪能したい。ご飯の上にキャベツ、“ふわトロ”の卵焼き、揚げたての豚カツをのせ、コクのあるソースをかけた地元グルメだ。デザートには柳津名物「あわまんじゅう」がおすすめ。地元産の粟(あわ)ともち米を使用した素朴な味わいが特徴で「小池菓子舗」(Tel.0120・090・976)などで購入できる。

ただみ・ブナと川のミュージアム |
自然に抱かれた暮らし体感
只見駅(只見町)の付近一帯は、東北で初めて「ユネスコエコパーク」に認定された、貴重な自然が残る地域だ。只見駅から徒歩で25分ほどの「ただみ・ブナと川のミュージアム」( Tel.0241・72・8355、入館料一般310円)は、只見地域の自然と暮らしを詳しく紹介する施設だ。同地域に生息する動物の剥製や昆虫・植物の標本などが多数展示され、あらためて生態系の多様さを学ぶことができる。ブナの巨木を中心に林や水辺を再現したジオラマコーナーも圧巻だ。
地元の米と水で米焼酎
お酒好きにおすすめなのは、福島県初の米焼酎専門蒸留所「ねっか」( Tel.0241・72・8872)。田んぼ脇の民家を改装した「日本一小さな蒸留所」だ。地元の水と米にこだわり米作りから醸造・蒸留まで一貫して行い、香りと深い味わいが自慢の米焼酎「ねっか」シリーズを販売している。“左党”へのお土産にも最適。試飲や見学もあり(有料)。余談だが、「ねっか」シリーズの一つ「ばがねっか」(720ミリリットル、2530円)は、筆者がこれまでに飲んだ中で最もおいしく感じた米焼酎で、個人的にイチオシ。
温泉も豊富
奥会津は温泉も豊富だ。只見川沿いの温泉街「柳津温泉」(最寄り駅は会津柳津駅)、開湯1300年の秘湯「西山温泉」(同)、湯治場として人気の「早戸温泉」(早戸駅)、炭酸泉の源泉かけ流し「玉梨温泉」(会津川口駅)など、どれも入ってみたい温泉ばかり。 |
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★ 奥会津観光全般の問い合わせ ★
福島県只見線管理事務所 Tel.0242・93・5155 |
★ 首都圏〜奥会津アクセスの一例 ★
東京駅から東北新幹線で郡山駅→磐越西線・会津若松駅→会津若松駅から只見線へ。
※只見線は現在、冬季の大雪の影響で一部区間に運休あり(5月中旬に再開見込み)。旅行の際は、運行状況、時刻など確認を。
【只見線ポータルサイト】 https://tadami-line.jp/ |
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