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季節の花々と美しい庭園が楽しめる中之条ガーデンズ |
群馬県の北西寄りに中之条町は広がる。“花と湯の町”をうたい、町中には四万(しま)や沢渡(さわたり)など主に3つの温泉郷が点在。季節の花々が美しい中之条ガーデンズや山の上庭園も人気だ。さらに緑のじゅうたんを敷きつめたようなチャツボミゴケの不思議な光景を楽しむこともできる。コロナ禍で疲弊した心身を中之条町の豊かな自然の中で癒やしたい。
中之条ガーデンズ
まず、花園を訪ねよう。JR吾妻線の中之条駅から車で15分のところに町営の中之条ガーデンズがある。花が彩るさまざまなスタイルの庭を巡るのがここの魅力。全体で12ヘクタールほどあり、ローズガーデン、町民花壇、渦巻き状に花が植栽されたスパイラルガーデンなど9つのゾーンで構成。中でも人気は約400種、1000本のバラが美しいローズガーデン。今秋は9月下旬から咲き始め、10月中旬に見頃を迎える見通しだ。赤や白などの色彩でまとめたコーナーやアーチがロマンチックなコーナーなど7つのコーナーでバラの花を堪能。池を挟んだナチュラルガーデンでは自然のままに草花が花を咲かせ、その先には木陰にゆったり座れるチェアなどを設置したピクニックエリアも。背後には1000本のハナモモ(花桃)の林が広がる。
鮮やかな緑が目に染みるチャツボミゴケ |
沢渡温泉
中之条ガーデンズから車で10分も行くと静かな山里の湯、沢渡温泉。10軒ほどの宿がたたずむ。さらに進むと暮坂峠。峠にはカラマツ林を背にしてマントをはおり雨傘を持って立つ歌人、若山牧水の旅姿の石像が立つ。牧水は、100年前の1922(大正11)年10月、草津温泉から沢渡、四万温泉へ向かう途中、この峠を越えた。台座には峠を越えたときの印象を詠んだ歌の一編「…沢渡の湯に越ゆる路 名も寂し暮坂峠」が刻まれている。
山の上庭園
暮坂峠を後にし、少し行くと右手に庭園が見えてくる。ここが山の上庭園。中之条ガーデンズとは姉妹関係で標高約1000メートルの文字通り山の上にある。2000年のオープン以来花々を育成している支配人の渕上奉夫さん(77)は「自生種も含め約350種の花が季節ごとに咲き乱れます」と言う。中でも8月中ごろから赤紫の花を咲かせるフジバカマに渡りチョウの一種アサギマダラが飛来。蜜をたっぷり吸ってから南の島へ飛び立っていく。「こちらでマーキングしたチョウが石垣島で発見されました」と渕上さん。チョウ好き、花好きに目が離せない花園だ。
渓流の自然が迫る四万やまぐち館の露天風呂 |
四万温泉
山の上庭園から北へ。国道292号を通って六合(くに)地区から草津温泉へ向かう途中を右手に進むとチャツボミゴケ公園がある。庭園から車で40分ほど。入り口で巡回バスに乗り換えて5分ほどで下車。ここから約300メートル歩くとチャツボミゴケが群生するくぼ地に出る。あたりは濃い緑一色の世界。沢沿いや斜面いっぱいに広がっている。中之条町教育委員会発行の資料によれば、一帯からは強い酸性の鉱泉が湧出しており、温度はおおむね20度前後。世界にはおよそ1万8000種のコケがあるといわれるが、強酸性の環境で生育するコケは極めて特異という。さらに、このコケは鉱泉の中に含まれる鉄バクテリアを吸収して数万年の長い年月をかけて鉄鉱石に変えていくという不思議なパワーを持つ。周辺には赤みを帯びた岩石なども散見でき、44(昭和19)年から65(同40)年までは約300トンの鉄鉱石を産出、「群馬鉄山」と呼ばれていた。こうした希少性と東アジアで最大級というコケ群生地の規模などから2017(平成29)年に国の天然記念物に指定された。
花を楽しんだ後は四万温泉へ。四万川に沿って約35軒の湯宿が立ち、豊かな自然と泉質の良さが自慢。54(昭和29)年に国民保養温泉地第1号に指定されている。
その1軒、四万やまぐち館の湯に漬かると渓流を挟んで谷の緑が迫り、心身がほぐれていくようだった。 |
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