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源兵衛川の中に置かれた足場を1歩ずつ、対人距離をとって歩く |
静岡県三島市は“水の都”といわれる。富士山の伏流水が市内で湧水となって顔を出し、蓮沼川、源兵衛川、桜川の清流を生む。特に源兵衛川は遊歩道が整備され、市民はもとより観光客にも人気が高い。飛び石伝いにせせらぎを行けば対人距離をとった状態での散歩が楽しめる。
楽寿園抜け、源兵衛川沿いへ
JR三島駅の南口を出ると正面に三島市立公園の楽寿園がある。園内の楽寿館は、三島を訪れた元陸軍大将小松宮彰仁親王が1890(明治23)年に別邸として建てたもので、1952(昭和27)年に三島市の公園として邸内と庭園を一般に公開。源兵衛川はこの楽寿園の庭園に広がる小浜池を源にしている。公園全体の面積は約7万5400平方メートルと広く、富士山噴火で流れ出た溶岩の上に約160種の樹木が自生し、森を形成している。その中心から南側に、伏流水が集った小浜池が広がる。自然豊かな楽寿園は1954(昭和29)年に国の天然記念物および名勝に指定された。なお、楽寿園の説明では池の水量は、その年の天候などによって増減するという。
池から流れ出た水は一帯の湧水と合流して源兵衛川となり、街中を南下する。
散策コースはこの川沿いを主に行く。川の中に置かれた飛び石伝いに歩いたり、小道を行ったりと変化に富む。三島市観光協会の山口賛・前事務局長(65)は話す。「三島駅を起点に源兵衛川沿いから三島梅花藻(みしまばいかも)の里などを訪ねた後、旧下田街道に出て三嶋大社を参拝し、再び三島駅に戻るコースです。全体で約5キロ、ゆっくり歩いて2〜3時間ほど。親子連れや熟年夫婦など幅広い層の人々が楽しんでいますね」
楽寿園南口を出て左に道をとり、すぐに右折すると源兵衛川の清流が目に入ってくる。遊歩道の始まりは、細い柱を10本近く川の上に渡した木道。続いて“川のみち”と呼ばれる飛び石状に置かれた足場を行く。一歩ずつゆっくり進む。飛び石になっているからいやでも対人距離をとって歩くことになる。清流が目に優しく、日頃のストレスも消えていくようだ。
江戸時代から続く老舗の桜家(Tel.055・975・4520)のうなぎ丼(4400円〜)。富士山の伏流水を浴びておいしさも格別 |
伏流水が育む「味」
やがて道は旧東海道を横切る。近くには老舗のうなぎ専門店、桜家がある。1856(安政3)年創業という歴史を持ち、平日でも客が列を作る人気の店だ。5代目という現在の店主・鈴木潮さん(60)は「三島の伏流水をウナギに浴びさせることで余分な脂気などがとれます」とおいしさの秘密を教えてくれた。
源氏ゆかりの大社
桜家を過ぎて伊豆箱根鉄道のガードをくぐり、再び水辺を巡って三島梅花藻の里に着く。三島梅花藻とは小浜池で1930(昭和5)年に発見された水草の一種で、主に5〜9月に梅に似た白い小さな花をつける。
三島梅花藻の里と通りをはさんで立つのが刀剣や絵本、人形など幅広い作品の収集展示で知られる佐野美術館。美術館からは街中を歩き、伊豆箱根鉄道駿豆(すんず)線の三島田町駅を越えて直進すると15分ほどで旧下田街道に突き当たる。左折し、5分ほどで正面に三嶋大社の鳥居が…。源頼朝が源氏再興を祈願した神社として知られ、現在は商売繁盛などを願って参拝する人が多い。
三嶋大社の西側の門から道を進むと、伏流水を集めた桜川沿いの遊歩道に出る。道沿いには三島を訪れた正岡子規、若山牧水らの文人による文学碑が12基立つ。桜川の水源の一つ、白滝公園を経てJR三島駅に戻る。
三島スカイウォーク |
富士山望む全長400メートルの大つり橋
JR三島駅の北東の方角へ車で20分ほど行けば、2015年にオープンした歩行者専用では日本一長い400メートルのつり橋、三島スカイウォークが延びる。橋の上からは、裾を長く引いた富士山の絶景が一望できる。 |
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