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天からの光が海面に反射して神秘的な景観を見せる天窓洞 |
静岡県・伊豆半島の西側に、その名もずばり、西伊豆町がある。半島西側の海岸線のほぼ中間に位置し、正面に駿河湾を望み、背後に天城山系を控える自然豊かな地で、温泉が湧き、新鮮な海の幸が自慢。1年中、観光客でにぎわう。新型コロナウイルスの影響で一時期営業を休んでいた旅館、飲食店、土産店などは現在、全て開業しているという。西伊豆町の魅力を紹介しよう。
天窓洞…天から注ぐ光
修善寺からバスで約1時間30分、車で1時間ほどで西伊豆観光の中心、堂ケ島に着く。国道136号そばのバス停で降りると目の前は青一色の海。桟橋からは国指定の天然記念物、天窓洞を巡る遊覧船が忙しげに発着している。早速乗ってみることにしよう。
所要時間は20分。角度により島が三つとも四つとも見えるので総称して三四郎島の名が付く四つの島の脇をかすめて、洞窟へ。
船は大岩が両舷に迫る入り口を巧みに抜け、薄暗い洞窟内に入る。すると、正面には輝く水面。頭上は、岩盤がそこだけ抜け落ちたように大きな穴が開き、天からの光が差し込む。まさに天窓。そこから天窓洞の名が付いたという。神秘的な光景だ。
天窓洞の入り口近くで見た三四郎島には干潮になるとおよそ200メートルに渡って海底が現れ、島と陸がつながり、満潮時には海の中に没するという珍しいトンボロ現象も見られる。
美しい夕日と三四郎島を一望する
ホテル天遊の露天風呂 |
海を望む温泉、イカの丼
三四郎島を眺めるように海岸近くには堂ケ島温泉の宿が立つ。その1軒、ホテル天遊(Tel.0558・52・1234)は夕日と三四郎島を眺めることができる露天風呂が自慢。くつろぎのひとときが堪能できる。
下船してバス停のある国道に戻れば駐車場の先に加山雄三ミュージアムが立つ。館内では映画セットの再現や撮影スナップ、加山雄三の絵画作品などを展示。 堂ケ島から車で約5分南へ下った沢田地区には断崖の上に共同湯の沢田公園露天風呂がある。駿河湾を一望する湯あみが魅力だ。
露天風呂近くの仁科(にしな)漁港はイカ漁が盛ん。漁協直営の沖あがり食堂(Tel.0558・52・0018)では、スルメイカやヤリイカの丼物のメニューが人気。鮮度のいいイカのこりこりした食感を味わいながら楽しめる。スルメイカの刺し身としょう油漬けがのった「いか様丼」900円〜。
かつお節を一つ一つチェックしながら天日干しをする(カネサ鰹節商店の芹沢さん) |
伝統の製法でかつお節
堂ケ島から今度は北へ国道136号を上がり、岬を二つ越えるとかつてカツオ漁で栄えた田子の集落に入る。「ここでは昭和45年ごろまで、およそ30隻のカツオ船が操業していましたが、現在は沿岸漁業に切り替わりました」と西伊豆町観光協会の鈴木貞夫事務局長(61)。
カツオの水揚げはないが、かつお節の製造は今も続けられている。4軒の製造工場が健在だが、その1軒、カネサ鰹節商店(Tel.0558・53・0016)は創業が明治15年という老舗。「本枯れ鰹節」という本格的なかつお節作りの伝統技術を今日まで継承している。カツオの身をおろし、これを釜で煮た後、この地に伝わる「手火山式焙乾(てびやましきばいかん)法」という伝統的な製法であぶり、いぶしながら水気を取る。まきを燃やして煙を出し、火の温度は140度前後。手をかざしながら火加減をみるので、手火山式といわれるようになった。「このやり方で作っているところは少なくなりましたね」と同商店5代目の芹沢安久さん(51)は言う。この後、カビ付けと天日干しを7回繰り返し、完成する。生の身をおろしてから半年後だ。
カネサ鰹節商店では直販も行っている。
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