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「トロッコ王国美深」 |
日本の面積の約22%を占める北海道はやはり広い。全道にさまざまな魅力が点在している。今回は旭川から北端の稚内までを結ぶ全長約260キロの宗谷本線に沿って道北を訪ねてみた。日本地図を縦に見れば稚内は一番上に位置している。その“てっぺん”を目指していざ、北へ—。
旭川―稚内、宗谷本線を北上
旭川駅から宗谷本線に乗り約20分で比布(ぴっぷ)駅に着く。この名を見て、「あのピップ?」と懐かしく感じる人もいるだろう。肩や腰などに貼るあの「ピップエレキバン」のテレビCMは実は、この駅で1980(昭和55)年に撮影された。昨年亡くなった樹木希林さんがホームに立っているシーンが全国に流れ、小さな駅は一躍脚光を浴び、観光名所になった。ホームにはその面影が残っているよう。
この先を進めば三浦綾子の名作「塩狩峠」の舞台となった塩狩駅がある。駅のそばには、三浦綾子旧宅を復元した塩狩峠記念館が立つ。
廃線にトロッコ
名寄駅から車で40分ほど西へ向かうと人造湖としては日本一大きい朱鞠内湖(しゅまりないこ)。周囲40キロで、湖畔をシラカバ林が縁取るように続く。巨大魚のイトウが生息し、大物狙いの釣りファンには宝“湖”とか。
名寄から6つ目の美深(びふか)駅。西へ向かえば日本海、東へ向かえばオホーツク海に通じる地にある。85(昭和60)年まで、ここからオホーツク海に向かう途中の仁宇布(にうぷ)まで旧国鉄の美幸線が走り、オホーツク海までつながる予定だったが廃線となった。「せめてオホーツクの海につながる夢は持ち続けよう」と地元の有志9人が廃線を活用した観光施設「トロッコ王国美深」を98(平成10)年に立ち上げ、かつてのレールにトロッコを走らせた。運転免許証がある人なら、ディーゼルエンジンで走るトロッコを往復10キロほど運転することができる。
「踏切や鉄橋があり、天塩川の支流ペンケニウプ川沿いの木々の香りを体いっぱいに受けながらの運転は、ほかにない体験です」と同王国の岩崎泰好理事(69)。2018(平成30)年には約20万人が訪れた人気スポットだ。 |
チョウザメの唐揚げ(左)と刺し身 |
チョウザメ料理
美深駅に戻り、蛇行する天塩川に沿って宗谷本線を北上。天塩川は全長約256キロで、北海道で2番、国内で4番目に長い河川だ。日本海に開く河口から約160キロまではせきなどの人工物はなく、自然のままの姿を楽しみながらのカヌーが人気。昭和初期まで河口でチョウザメが捕れていたことから、美深町内にチョウザメ館が作られた。現在、町内で約9600匹を飼育し、生育状況を公開している。その身は宿泊施設「天然泉びふか温泉」のレストランで味わえる。あっさりした味わいが特色で、唐揚げや刺し身などのほか、貴重なキャビアも宿泊客に出している。
宗谷岬に至る宗谷丘陵の一部にはホタテガイの貝殻を敷きつめた“最北の白い道”が延び、道のかなたに青い海が見える |
宗谷岬到着
美深から日本の“てっぺん”の稚内を目指す。温泉が湧く豊富(とよとみ)町を過ぎた辺りから車窓の左手に利尻富士の名で親しまれている利尻岳(利尻島)が海に浮かぶように優麗な姿を見せ始める。美深から特急で約2時間30分で稚内に到着。
「日本最北端の線路」の碑が立ち、その先にレールはない。北端まで来たことを実感する。駅から車で40分も行くと宗谷岬に着く。三角錐を思わせる「日本最北端の地」の碑が先端に立ち、その後方に宗谷海峡がぼうようと広がる。晴れれば約43キロ先に、間宮林蔵が探検したサハリン(樺太)も望める。 |
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