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富山湾の向こうに浮かぶように見える立山連峰 |
「天然のいけす」として名高い富山湾。中でも北西部の氷見(ひみ)沖は、魚を傷めずに生きたまま取れる定置網漁の最適地だ。冬の寒ブリが代表格だが、四季を通し“旬の魚”に事欠かない。“食都”の誇りを持つ料理人は、繊細な技でそのうま味を引き立てる。海越しに立山連峰を望む富山県氷見市で、飛び切りの鮮度を満喫—。温泉にもつかり、心と体を癒やしたい。
豊かな漁場と「氷見三昧御膳」
沿岸部から急傾斜の海底谷(かいていこく)を経て最深部1200メートルを超す深海へ—。暖流系、冷水系双方の海水層がある富山湾では、約300種もの魚介類が水揚げされる。中でも大陸棚が発達している氷見沖では、400年以上前から定置網漁が盛んに行われてきた。取れた魚はすぐ、砕氷をふんだんに用いた「水氷」へ。魚を仮死状態にさせる伝統の技法で、鮮度を保ったまま漁場から30分ほどの漁港に運ぶ。
「仲買民宿あお」(Tel.0766・74・3300)の松波久彭(ひさみち)さん(71)は「その日、『一番良い』と思えた魚を仕入れるので、(魚介類の)種類は毎日変わる」と話す。氷見といえば冬の寒ブリのイメージが強いが、「氷見に、うまい魚のオフシーズンはない(笑)」。春はマイワシやサヨリ、夏はクロマグロやイワガキ、そして秋はカマスやアオリイカ…。「奇をてらわず、魚本来の味で勝負している」と歯切れ良い。
「食彩居酒屋 灘や」の「氷見三昧御膳」。店主の杉木克己さんは、「日々変わっていく“旬の魚”に合わせて献立を練る。だから『秋』といっても、初秋と晩秋では、かなり異なる内容となります」 |
JR氷見駅の近くで「食彩居酒屋 灘や」(Tel.0766・72・0424)を営む杉木克己さん(70)も口をそろえる。「原点は漁師料理。(魚に)手を加え過ぎないよう気を付けている」。とはいえ、食材の良さを際立たせるには、「包丁の入れ方や微妙な塩加減…、料理の腕はやはり大事」と笑みを見せる。氷見市などが“食都”なららではの企画として力を入れる昼特別メニュー「氷見三昧御膳」でも、担い手の中心だ。市内のホテルや旅館、民宿、飲食店約30店が特色を競う中、「灘や」の「氷見三昧御膳」(3240円)は、刺し身や煮付け、天ぷらなどの魚料理を中心にした上で、氷見牛や氷見うどん、地元産野菜の献立も盛り込んでいる。
「氷見三昧御膳」は原則平日限定で要予約。値段は店によって異なり、3000円台〜4000円台。多くの店は“ワンランク上”の「氷見三昧かがやき御膳」も提供している。 |
富山湾を望む「氷見温泉郷」の露天風呂。氷見の朝日は、「日本の朝日百選」の認定を受けている |
氷見温泉郷
海面を染める朝日や夜の漁火(いさりび)が見える露天風呂も—。氷見には沿岸部を中心に温泉が点在し、「氷見温泉郷」の総称で呼ばれている。
温泉に入れるホテルや旅館などの施設は現在、約20軒。2015年春の北陸新幹線開業(長野—金沢)で、「東京—氷見」は3時間余りに。開業前に比べ1時間ほど短縮されたこともあり、「グルメも温泉も!」という観光客の注目度が上昇中だ。肌がすべすべになる“美人の湯”との評判も広まりつつある。 |
買い物客でにぎわう「ひみ番屋街」 |
ひみ番屋街
氷見漁港場外市場「ひみ番屋街」(Tel.0766・72・3400)には、氷見で水揚げされた魚介類、干物などの水産加工品、氷見牛や氷見うどん、氷見カレーといった土産物を売る店が並ぶ。飲食もできる氷見観光の中核施設として2012年秋にオープンして以降、年間来場者数は約120万人を数えている。
日帰り入浴施設「氷見温泉郷 総湯」(Tel.0766・74・2611)も併設。源泉掛け流しで、天気の良い日は、富山湾越しに立山連峰の絶景を見ることができる。入浴料大人(中学生以上)600円。
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【氷見観光の問い合わせ】
(一社)氷見市観光協会 Tel. 0766・74・5250
※「氷見三昧御膳」に関する問い合わせも受け付け。 |
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