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“冬の味覚の王者”ともいわれる越前ガニは今がシーズン。その越前ガニの故郷、福井県越前町とお隣の南越前町を訪ねてみた。雄大な日本海を一望する越前岬や越前陶芸村、かつて日本海で活躍した北前船の船主の豪壮な館など、変化に富んだ見どころが点在している。
岬の眺望と越前温泉
南北に延びる越前海岸の背後に丘陵が続く越前町。JR北陸線武生駅から車でおよそ50分、丘陵が日本海に突き出た越前岬に出る。高さ130メートルの断崖が日本海の荒々しい波と共にダイナミックな景観を見せている。一帯は水仙の群生地として有名。岬の突端には白亜の越前岬灯台が立つ。展望台からは福井県北部の奇岩怪石の岬、東尋坊(とうじんぼう)から南の敦賀半島まで、180度のパノラマが楽しめる。
国道305号を南下すると、丘陵が海に迫るわずかな平地に約30軒の温泉宿が点在する越前温泉がある。海を眺めながら入る温泉と日本海の幸が自慢で、3月ごろまでは越前ガニも味わえる。
国道沿いには町営の「越前がにミュージアム」がある。
生きた越前ガニを水槽で展示し生態を解説。カニ漁船の出港、漁場での操業、帰港と、一連の作業を疑似体験できる人気コーナーなどもある。
越前焼窯元の「前田陶苑」 |
素朴な風合いの焼き物
越前海岸から山あいへ車で30分も行くと、越前町の越前陶芸村に着く。同所は歴史ある焼き物を代表する「日本六古窯」のひとつ越前焼の故郷だ。一帯は今も陶器作りの原料である陶土が豊富で、平安時代からこの地で焼かれていた。ほかの「六古窯」と共に2017年に日本遺産に認定された。陶土で成形し、釉(うわぐすり)を塗らずに自然のまま焼きしめる作り方で、素朴な風合いが特色。周辺にはおよそ35軒の窯元が集まる。
その一角に2017年10月28日、「越前古窯博物館」がオープンした。敷地内には資料館や越前焼の名付け親のひとり、越前焼研究家・水野九右衛門の旧宅、茶室の天心堂、天心庵が立つ。水野自らが発掘、収集した平安時代から現代までのコレクションなど貴重な作品が展示されている。 |
「右近家」の館内。2階の屋根裏まで吹き抜けの造りは北前船の帆柱の高さを表している |
北前船主の館
南越前町には江戸時代から明治時代中期にかけて活躍した北前船の船主の館が2軒残されている。右近家と中村家である。どちらも日本遺産に認定されているが、右近家は一般に公開され、中村家は不定期の公開。
北前船は1枚の大きな帆をかけて、北海道からは当時の主要な肥料であったニシンの搾りかす、京・大阪など本州からは米、みそ、しょうゆ、瓦などを日本海経由で運び、寄港地では物資の売買も行っていた。一般的に千石船と呼ばれたその大きさを後世に伝えるべく、九代目の右近権左衛門が1901(明治34)年に改築したのが現存する屋敷だ。
玄関を上がると2階の屋根裏までが吹き抜け。およそ12メートルあり、ガイドの寺下貢さん(84)によれば、「帆柱は24メートルありますから約2分の1。全長は約40メートルありましたが、この家の蔵から奥座敷までの長さです」と言う。そう案内されて屋敷の中心に立つと、確かに千石船の大きさが実感できた。 |
10品目の刺し身 |
宿で「日本海の幸」
越前温泉の1軒、「越前の宿 うおたけ」は温泉と新鮮な魚介類が自慢。晴れた日の夕刻、湯船に漬かると、日本海に沈む夕日を眺めることができる。夕食には目の前で取れた甘エビや地でしか食べられないガマエビ、マダイ、サワラ、カジキ、バイガイ、マイカなど10品目の刺し身。これに人気のノドグロの塩焼き、たいシャブなどが並ぶ。今の時季は、注文すれば越前ガニも味わえる。うおたけ Tel.0778・37・1099 |
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◆ 越前町、南越前町観光の問い合わせ ◆
福井県観光連盟 Tel.0776・23・3677 |
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