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“四万の病に効く”伝説の湯・四万温泉 群馬県/中之条町 |
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四万川のせせらぎを耳にして温泉が楽しめる
「四万やまぐち館」の“お題目風呂” |
利根川の源流の一つ、四万(しま)川が流れ出る山懐に四万温泉は湯煙を上げている。高崎や渋川方面から延びる国道353号が新潟県境に続く山々に突き当たる、群馬県の北西部にある。かつては秘湯ともいわれ、湯治客に親しまれていたが、今は若い層から熟年層まで幅広い温泉ファンが訪れている。自然豊かな名湯の里を紹介しよう。
国民保養温泉地の第1号
四万温泉は四万川の渓谷に沿って35軒の宿が点在する静かな温泉地。最寄りのJR吾妻線中之条駅からバスで約40分、車なら関越道渋川伊香保ICから約1時間の、谷間の最奥にある。自然は豊かで、春の新緑、秋の紅葉など四季折々に美しく彩られる。
泉質はナトリウム・カルシウム─塩化物・硫酸塩泉で、昔から「四万(よんまん)の病に効く」といわれるほど効能は高い。
江戸時代の1774(安永3)年に書かれた地理書「上野國志(こうずけこくし)」の中の「四万温泉記」に“この湯につかると、世のちりを洗い、世俗な心を癒やしてくれる”との記述があり、泉質の良さが心身を癒やすことが古くから知られていたようだ。群馬県内の名所などを盛り込んだ「上毛かるた」にも引用され“世のちり洗う四万温泉”の文句が見られる。飲泉もでき、胃腸病などにいい。自然環境と温泉の良さから1954(昭和29)年には国民保養温泉地の第1号に指定された。温泉街には5カ所の共同湯と2カ所の飲泉所、4カ所の足湯があり、宿泊客や日帰り客が手軽に名湯を楽しんでいる。
伝説では平安期に源頼光の家臣が夢の中で童子より「霊泉を授ける」とのお告げがあり、発見したとされる。それが温泉地の一番奥の日向見(ひなたみ)地区で、四万温泉発祥の地とされ、伝説にちなんで名づけられた共同湯「御夢想の湯」がある。近くには国の重要文化財に指定された、およそ400年の歴史を持つ県内最古の寺院建築の日向見薬師堂がある。江戸時代には湯治客がこの湯に入り、病の治癒を願って薬師様に祈ったと伝えられる。
温泉の湯は無色透明で肌に優しく、現代では女性に人気が高い。
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川魚専門店「くれない」のイワナ、ヤマメの塩焼きと湯むしうな重 |
川魚の美味
四万温泉の中心、新湯地区にはスマートボール場やスナックなどが10軒近く並ぶ昭和レトロそのままの横丁がある。その中の1軒、四万川にかかる落合橋のたもとに川魚専門店「くれない」がある。昭和9年創業の老舗で、人気は清流で育ったイワナやヤマメの塩焼き(各750円)と湯むしうな重(3240円)。淡泊ながらうまみが広がる塩焼きと3代目の羽田賢士さん(46)が焼く絶品のかば焼きは訪れる温泉ファンに人気。予約制ではないので早めに行く方がいい。 |
中之条ビエンナーレに展示された作品と作家の福島陽子さん |
現代アート「中之条ビエンナーレ」開催中
自然と歴史に彩られた四万温泉だが、この四万温泉を含めた中之条町では10月9日(月・祝)まで中之条ビエンナーレが開催中。現代アート作品を中心に、屋外や古民家などを会場にして展示する2年に1度の芸術祭で、今回で6回目。国内外から約150組のアーティストが参加し、約50カ所で展示されている。出品者の1人、パリ在住の造形作家福島陽子さん(41)は「ブルーオデッセー」を制作。展示会場天井よりつり下げられた小さな鈴とブランコ、その下に円形に並ぶガラス瓶の破片‥。「厳しさと輝きを備えた現実世界、地球で営まれる試練の旅路を表現しました」と語る。
前回は約47万人が訪れ、現代アートを楽しんだという。秋の季節を迎え、名湯と芸術の世界に浸れる四万温泉はおすすめのスポットだ。 |
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◆ アクセス ◆
JR吾妻線中之条駅下車。バスに乗り換え約40分。車は関越道渋川伊香保IC利用。
◆ 観光の問い合わせ ◆
四万温泉協会 Tel.0279・64・2321 |
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