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  今月の旅情報 平成28年12月上旬号  
中国に残る日本統治時代の史跡  中国/大連ほか

かつて満鉄が経営していた 大和ホテル(現・大連賓館)
満鉄が進めた街の整備…大連市街
 成田空港から空路で約3時間の大連は、中国東北部の中核都市。日露戦争後の40年間は日本の統治下に置かれ、日本の近・現代史と関係の深い街である。今回の旅では、大連郊外の旅順(現・大連市)にも足を延ばして日露戦跡を訪ね、日本租借時代に至る歴史に触れた。

 高層ビルが林立する大都会でありながら、三方を海に囲まれた港町・大連の人口は約600万人。アカシアの都ともいわれ、白い花咲く5月は花の甘い香りが漂い、アカシア祭りが開催される。

 もとは寒村にすぎなかったこの地を開いたのは、19世紀末に同地を租借した帝政ロシアだ。町をダリニー(はるか遠い地)と名付けて都市計画を進めたが、日露戦争後は日本がまちづくりを引き継ぎ、大連と改名した。その中心となった担い手が、南満州鉄道会社(略称・満鉄)だった。初代総裁は後藤新平。大連に本社を置き、鉄道事業のほかにも、鉱山や牧畜など広範囲に及ぶ事業を展開した。

 市街中心の中山広場に面した大連賓館も、もとは大和ホテルの名で満鉄が経営した宿だ。「昔は五つ星。今は設備が古くなりウメボシホテルになりました」と冗談交じりの日本語で話すホテルの卲旦祥(しょうたんしょう)さん(35)。館内は宿泊者以外も見学が可能(有料)。各国の要人を迎えた貴賓室、赤いじゅうたんを敷いた重厚な階段やダンスホール(今はレストラン)のほか、大和ホテル時代の歴史資料が展示された陳列室などを巡ることができる(所要時間は約20分)。100年以上の歴史を感じるカフェで雰囲気を味わうのもいい。

 満鉄本社だった社屋は現在、中国鉄路局が所有。建物の一部は大連満鉄旧跡陳列館として公開され、見学が可能だ。

 この社屋は、日露戦争直前にロシアが建築していた学校を戦後、満鉄が改修したもの。現在の展示室ももとは礼拝堂だったそうで、高い天井には華麗な装飾が往時のまま残る。そんな優美な室内に、満鉄史を紹介する写真や遺留品(満鉄マークの入ったマンホールのふたなど)を展示。満鉄総裁室や金庫室の見学を含め、日本語を話すスタッフが案内してくれる。


白玉山から見下ろす旅順港
日露激戦の地を巡る…旅順
 大連市街から車で2時間の旅順にも足を延ばした。日露戦争の激戦地となった旅順はその歴史を物語る遺構が数多く現存し、「旅順観光イコール戦跡巡り」といっても過言ではない。中でも二〇三高地は、もと海抜206メートルあった山が3メートル削られて、203メートルのはげ山になったといわれるほど、日々の砲撃が続いた戦場だ。


日露戦争終了後、二〇三高地に乃木大将が爾霊山と刻んだ碑を建立
 終戦後、乃木希典将軍は散乱していた砲弾を集めて203にかけて「爾霊山(にれいさん)」と記した碑を建立した。ちなみに乃木将軍の息子は、この二〇三高地の争奪戦で戦死している。乃木将軍は、白玉山にも戦死者追悼の碑を築いている。同山は、旅順全景を見渡す景勝地。広瀬武夫中佐が戦死した閉塞(へいそく)作戦で有名な旅順港の入り口もよく見える。その頂にそびえるのが、乃木希典と東郷平八郎の提案で建てた「白玉山塔」。建立には中国人2万人を動員し2年を要した。ろうそくの形をしているのは、戦没者が日本へ戻る道を明かりで導く意味を込めたからとか。

 旅順での戦闘終了後、日露両軍が会見した場所が水師営会見所。戦前は農家、戦中は野戦病院として使ったわらぶきの家屋だった。文化大革命で壊された後に再建して公開。屋内には戦中の様子を伝える画像や記念物(会見時に机として使用した手術台など)を展示している。


6161205日露戦争の記録写真について解説する水師営会見所の蔡婷さん
 壁に貼られた写真は、会見後の記念撮影や日露両軍の死体散乱の様子、スパイ容疑者の処刑場面など数十枚。それら1枚1枚をスタッフの蔡婷(さいてい)さん(31)が説明していく。最後に「戦争は残酷なこと。今の平和は大事。特に日中の友好は大切ですね」と締めくくった。
【大連・旅順の観光の問い合わせ】
中国国家観光局駐日本代表処 Tel.03・3591・8686

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