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黒田安念寺の観音像などの頭部は雨漏りで傷みが進んだといわれる |
織田信長や豊臣秀吉、石田三成ら戦国、安土・桃山時代の武将にゆかりの深い滋賀県長浜市。合戦の戦禍で多くの物は失われたが、今もなお国指定重要文化財を含めて約130体にも及ぶ観音像が住民たちによって守り継がれているという。現代も観音信仰が息づく「観音の里」を歩いた。
戦国の戦火、守られた古仏
顔も形もほとんど残っていない10体の聖観世音菩薩像などの古仏。これら菩薩形立像などが安置されている黒田安念寺は、奈良時代の726年に藤原不比等の庶子、詳厳法師が開いたと伝わる。その後、この地に藤原一族が永住し、現在もその子孫となる10戸の住民たちによって仏像が守られている。
この観音像は「いも観音」というユニークな通称で呼ばれている。なぜ、そう呼ばれるようになったのか—。かつての合戦時、村人たちは観音像を土中に埋め、兵乱が収まってから掘り出したと伝えられる。その際、余呉川で芋を洗うように泥土を洗い落としたことから付いた通称という。
これら仏像は2000年〜05年の間に7体が盗難に遭い、現在安置されているのは10体。この貴重な仏像を拝観するため、関東などから年450人程度が安念寺を訪れている。拝観料は1人300円。
JR木ノ本駅徒歩20分。 |
さらし巻いた「安産の仏様」
大浦十一面腹帯観音堂の十一面観音菩薩立像は、腹にさらしの帯を巻くことから「腹帯観音」といわれている |
安産祈願で有名なのは大浦十一面腹帯観音堂のご本尊、十一面観音菩薩立像。観音像の腹部に1週間ほどさらしを巻き、このさらしを妊婦に授けると安産のご利益があると伝えられている。
平安初期、比叡山延暦寺の開祖、伝教大師最澄が完成させたとされる像は、カヤの一木造り。「腹帯観音」の通称で親しまれ、さらしの腹帯は皇室にも献上されたという。
その腹帯観音が盗難に遭ったのは03年のこと。堂では300万円の賞金を付けて探し、1年半後に見つかった。滋賀県内ではこの年多くの仏像が盗難に遭ったが、戻ってきたのはこの腹帯観音だけだったという。「たとえ、盗んだ犯人が返してきても賞金を払うつもりだったんです」と観音堂世話役の小川俊之さん(50)は話す。
JR永原駅徒歩10分。 |
【黒田安念寺・大浦十一面腹帯観音堂の拝観】
拝観は事前の電話予約が必要。奥びわ湖観光協会 Tel.0749・82・5909 |
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想古亭源内の料理。同旅館は北近江・賤ケ岳の麓にたたずむ一軒宿 |
料理旅館「想古亭源内」
琵琶湖の幸や地元の新鮮な素材を個室でゆっくり味わえるのが老舗の料理旅館「想古亭源内」。長浜市の特産品をふんだんに盛り込んだ料理が楽しめる。JR木ノ本駅から車で5分。Tel.0749・82・4127 |
「杵つきかぐや餅」の店 |
杵つきかぐや餅
2014年に国の重要文化的景観に選定された「菅浦の湖岸集落景観」。その近く、「奥琵琶湖パークウェイ」の名物「杵つきかぐや餅」は絶品。つきたて、無添加、まきの火で蒸されたよもぎ餅は1箱8個入りで800円。奥琵琶湖の隠れ里・菅浦を訪れたらぜひ、賞味したい。
7~8月、都内で展覧会
7月5日(火)〜8月7日(日)には、東京藝術大学美術館(JR上野駅徒歩10分)で「観音の里の祈りとくらし展—びわ湖・長浜のホトケたち—Ⅱ」が開催される。
2014年に続き、長浜の庶民信仰を成す重要文化財約10体を含む40を超える仏像をはじめ、観音の里に伝わる古文書なども併せて展示する。問い合わせは長浜市総合政策課 Tel.0749・65・6505 |
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【長浜市の観光全般の問い合わせ】
長浜観光協会 Tel.0749・65・6521 |
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