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波打ち際ギリギリにある荒磯温泉の露天風呂 |
湯のぬくもり恋しい季節。島根県西部の石見地方を訪ね、日本海の荒波臨む荒磯温泉(益田市)でワイルドな露天の湯を体感。山里に湧く美肌湯・有福温泉(江津市)では石段続くひなびた風情の温泉街を歩き、レトロな外湯と石見神楽の舞に酔いしれた。
「海」の荒磯温泉
春から秋にかけてのおだやかな日本海もいいが、荒波押し寄せる海と鉛色の空が織りなす冬の情景も心に迫る魅力がある。
日本海の海岸線に建つ荒磯館は、白波が建物ギリギリまで打ち寄せる荒磯温泉の一軒宿。日本海とつながっているかのような感覚になる露天の湯船から見渡せるのはひたすら空と海の大パノラマである。漆黒の闇の豪快な波音を聞きながらの夜の入浴も一興。天候のよい日は水平線に沈む夕日が美しい。露天風呂はもとより客室やダイニングなど全館内から海の絶景が望めるのもうれしい。
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【荒磯温泉のアクセス・問い合わせ】
JR山陰本線鎌手駅徒歩15分。荒磯館 Tel.0856・27・0811 |
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山あいの傾斜地にひな壇のように立ち並ぶ有福温泉街の町並み |
「山」の有福温泉
日本海から内陸部に入った山里に、開湯およそ1300年前と伝わる山陰の名湯・有福温泉がある。石段の坂道が入り組んだ温泉街には瓦屋根の民家や旅館が密集。石段を上った丘の上にはアーチ窓が特徴的なレトロな洋館・共同湯「御前湯」(400円)があり、しっとりした湯の町風情を感じさせる。窓から自然光が降り注ぐ湯船には清らかな無色透明の単純アルカリ泉(源泉掛け流し)が満ちている。湯はサラリとやわらかで、美肌効果が高いという。2階の休憩室には古き良き有福温泉の様子を物語る写真が展示されていた。
客席まではみ出す演技に観客が思わずのけぞる場面も |
普段は静かな温泉街だが、毎週土曜日は御前湯のそばに常設された「湯の町神楽殿」で、地元神楽団による石見神楽が上演される(午後8時半〜、1000円)。元来は神事だが演劇性の強い石見神楽は、郷土芸能として親しまれ、テンポよい笛や太鼓のお囃子(はやし)とダイナミックな舞が特徴だ。
同神楽殿の舞台は客席との距離が近いため、間近に迫る神楽の臨場感に圧倒される。代表演目「大蛇(おろち)」では客席まで押し寄せる大蛇の迫力に、最前列の観客が慌てて退くことも。
金糸銀糸を織り込んだ豪華絢爛(けんらん)な衣装にも目を奪われる。舞衣(まいぎん)と呼ばれ、値段も高価だが重量も肩に食い込むほど重い。その重さに耐えながらの勇壮な舞はかなりのエネルギーを消耗するため「1回の公演で数キロは痩せますね(笑)」と団長の伊藤康則さん(57)。最年長の伊藤さんから最年少は高校生まで、団員の年齢層は幅広い。「有福の湯は稽古の疲れを癒やしてくれる恵みの湯。毎日入っています」と話す。 |
【有福温泉のアクセス・問い合わせ】
JR山陰本線江津駅からバスで約40分。有福温泉観光案内所 Tel.0855・56・2277 |
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