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新鮮野菜の数々。「佐助ナス」など郡山ブランド野菜のネーミングは、全て一般公募で決定する |
東北一の大きさを誇る湖・猪苗代湖。福島県郡山市は、湖の水を利用するため明治政府が行った大事業「安積(あさか)開拓」によって発展した歴史を持つ。豊富な水源を得た同地域は以後、豊かな食文化を育んできた。今回、開拓時代に盛んになったという鯉(こい)の養殖や、同市の新たな顔として注目される「郡山ブランド野菜」の生産農家など、元気な“食の現場”を訪ね、郡山市の魅力を体感した。 |
「生産者メンバーの、野菜や種の目利き力が最大の特長」と鈴木光一さん |
野菜…おいしさ重視、ブランド化
「郡山の人に『おいしい』と言ってもらえる野菜が作りたい」。鈴木農場・伊東種苗店(Tel.024・951・1814)の鈴木光一さん(53)を中心に、郡山農業青年会議所のメンバーが、2003年から野菜のブランド化に取り組んでいる。郡山市の新たな特産品をつくろうと、「御前人参」や「佐助ナス」などを毎年1品ずつブランド化し、今年でブランド野菜は12品目になる。
鈴木さんは、コメ農家の3代目。ところが、減反政策で大規模稲作経営が困難になった。その折、自給用に生産していた野菜を近所の人へ販売すると「おいしい」と評判に。それが当時では珍しい常設直売所を始めたきっかけだ。
鈴木さんが目標にしているのは、地元の人に愛される野菜だ。「市場に出荷されるものは、形がそろっていて箱詰めにしやすく、病気になりにくいもの。けれど、それがおいしいとは限らない。消費者が求めているおいしさを追求した野菜が作りたい」。傷みやすくても、形が悪くてもおいしい野菜は存在する。そういう野菜を味わえるのは現地ならではの魅力だ。
11〜12月の収穫期には、畑を巡って収穫できるツアーを行う予定だ。
郡山ブランド野菜は、福島産の食材にこだわる地元レストラン「福ケッチァーノ」(Tel.024・983・3129)などで食べることができる。 |
鯉をチェックする廣瀬剛さん。福島県の鯉の 養殖量のうち、郡山がその約7割を占める |
鯉…臭みなく肉に甘味
郡山市は全国有数の鯉の養殖地として知られる。安積開拓時に造られたかんがい用のため池を利用し鯉の養殖が本格的に始まったという。13年には養殖量全国一になるなど現在でも盛んだ。
郡山の鯉は臭みがほとんどなく、食べやすいのが特徴。臭みがなく肉に甘味があるのは、猪苗代湖の水質と、自然に近いエサや飼育環境などが影響しているという。
「廣瀬養鯉場」(Tel.024・951・1338)の廣瀬剛さん(39)が特にこだわるのはエサだ。郡山ではかつて、猪苗代湖の水力発電を使って製糸産業が栄えた。その際、大量に発生した蚕のサナギを乾燥させ鯉の餌として与えたという。同所では、今も蚕のサナギと配合飼料などをエサとして与えており、おいしい鯉が育っている。
鯉料理は「正月荘」(完全予約制、Tel.024・983・3199)で味わうことができる。代表的なコースメニュー「恋づくし」は3500円。 |
仁井田本家。「農薬も化学肥料も一切使わない自然米」と「健康に良い発酵食品」が特長 |
仁井田本家の「自然酒」。
上は金賞受賞の「燗誂」 |
酒…世界が認めた品質
1711年の創業から300余年、老舗酒蔵「金寳酒造仁井田本家」( フリーダイヤル 0120・552・313)は、自然米100%、天然水100%の酒造りを行っている。
18代目の仁井田穏彦さん(50)は「日本の田んぼを守る酒蔵になる」ことを目指し、農薬や化学肥料を一切使用しない自然米にこだわる。「有機栽培は手間がかかり工夫が必要ですが、田村町(郡山市)が有機栽培・自然栽培の先進地になれれば」と話す。同社自慢の日本酒は「自然酒」(登録商標)と命名し販売。
同社の自然酒ブランド「純米吟醸」と「燗誂(かんあつらえ)」は今年、世界的にも最高権威と名高い「インターナショナルワインチャレンジ2015」SAKE部門でそれぞれ金賞を受賞し、国際的な評価を受けた。
同社は毎年、全国から田んぼ見学に訪れる人との「ふれあい体験」を実施。今年で10年目だ。次回の「仕込み編」は、16年2月27日(土)、3月5日(土)、同12日(土)の予定。 |
“郡山の食”の問い合わせ
【郡山市国際政策課】Tel.024・924・3711
【アクセス】東京駅(東北新幹線)→ 郡山駅。約80分。 |
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