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2011年に50周年を迎えたUBEビエンナーレ。
ときわ公園にある野外展示場には「蟻の城」も展示 |
戦後、石炭を燃やした時に発生するばいじんによる大気汚染が深刻だった山口県宇部市。「降灰量日本一」といわれた公害問題を克服していく一方で緑化運動を展開し、その後、街を彫刻で飾る運動も加わって「緑と花と彫刻のまち」に発展してきた。「日本の都市公園100選」に選ばれた緑豊かなときわ公園には今年、野生動物が生息地に近い環境で暮らす「ときわ動物園」が一部リニューアルオープンした。人気の高い鉱山や工場などを巡る産業観光を含め、宇部市観光の魅力が輝きを増している。
野外彫刻、市内に200点
「まち全体が野外彫刻の美術館」と称される宇部市。その言葉の意味は、山口宇部空港に降り立つとすぐに分かる。同敷地内に設置されている彫刻は12点。さらに、空港から市中心部へと移動する間、市街地や駅前広場、市の主要施設など、さまざまな場所で野外彫刻を目にする。その数は宇部市全体で約200点にも上るという。
中でも著名なのがときわ公園内の野外展示場に常設展示されている向井良吉作「蟻の城」。過酷な戦争体験を原点に制作された作品で、市のシンボルとして市民から親しまれている。また、宇部大橋の傍らに展示されている「大首㈽」(吉野辰海作)は高さ4メートルもの巨大な犬の頭部が見る者を驚かせる。
これら彫刻のほとんどは、国内最大規模の野外彫刻展「UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)」の受賞作品。彫刻家の登竜門といわれる同彫刻展は、1961年から宇部市が2年に1回開催している。 |
ときわ動物園のシロテテナガザル |
野生動物の生息環境再現
UBEビエンナーレが開催される「ときわ公園」は、東京ドーム約40個分の広さを誇る巨大都市公園。その公園内の動物園ゾーンのリニューアル計画が進められ、2015年3月に一部が「ときわ動物園」としてオープンした。
野生動物がそれぞれの生息地の環境で、本来の行動を発揮することができる「生息環境展示」を基本方針にリニューアルを進めている同動物園。その一部、「アジアの森林ゾーン」には、水モート(水掘)に浮かぶ島に樹高10メートルの高木を植えシロテテナガザルを飼育。またボンネットモンキーとコツメカワウソの“同居”を日本の動物園では初めて見ることができる。
16年春には、3つの新ゾーンがオープン予定。 |
江戸中期に吉部地区で発案されたと伝わる「ゆうれい寿司」 |
「ゆうれい寿司」に舌鼓
北部エリアに位置する吉部(きべ)地区に古くから伝わる郷土料理が「ゆうれい寿司」。この不気味な名前は、具を入れない「白すし」だったためそう付けられたという。
江戸中期ごろ、海から遠い吉部地区で鮮魚類の入手は困難。しかし、この地はおいしいコメの産地のため、酢の代わりにユズを使っておいしい押しずしを作ったことが始まりだ。現在は、シイタケや山菜、油揚げ、卵などを入れたまぜずしを下半分くらい敷き、その上に、昔ながらの白すしをのせて作る。 |
露天掘りの石灰石鉱山を走るダンプトラック |
産業観光バスツアーは21コース
宇部市などの近代産業発展の礎を作った先人たち。その「共存共栄の心」が学べるツアーとして人気なのが、宇部市と近隣の美祢市、山陽小野田市を巡る産業観光バスツアーの「大人の社会派ツアー」だ。今回、「セメントの道〜石灰石鉱山と宇部興産専用道路」に参加した。
ツアー中、その迫力に圧倒されたのが石灰石の鉱区、伊佐鉱区(美祢市)の光景だ。露天掘りの鉱区の中を、最大91トン積載のダンプトラックが忙しく走り回る。案内してくれた産業観光エスコーターの渡邉輝弘さん(78)は「ダンプトラックは街で見かける大型ダンプカーの9倍の岩石を運ぶことができるんです」と話す。産業観光バスツアーは21種類から選べる。 |
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【宇部市観光の問い合わせ】
宇部観光コンベンション協会 Tel.0836・34・2050 |
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