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  今月の旅情報 平成27年5月下旬号  
家康目指して“長寿食”  静岡県/静岡市、浜松市

400年の時を経て今に受け継がれている丁子屋のとろろ飯
 織田信長、豊臣秀吉の後を継いで江戸幕府を開いた徳川家康。平均寿命が50歳といわれていた当時、75歳まで生きた。その健康長寿によって260年余におよぶ徳川幕府の礎を築いた家康は、「命は食にあり」を座右の銘にするほど「食」に大変気を使ったという。2015年は家康没後400年の節目。家康がどんな「食」を好んでいたかを探ることで、高齢化社会を生きる私たちのヒントにしようと、静岡市と浜松市を訪ねた。

自然薯の滋味豊か「とろろ飯」
 静岡県には「家康公が好んで食べた」と今に伝わるものが数多くあるが大豆やみそ、ナス、納豆、お茶、わさびなど比較的地味なものが多い。

 中でも「とろろ」は好物だったらしく、麦飯にかけた「とろろ飯」を健康食として好んだという。そのとろろ飯で江戸時代から東海道丸子宿の名店として知られるのが1596(慶長元)年創業の「元祖 丁子屋(ちょうじや)」だ。丸子宿のとろろ飯は、松尾芭蕉の俳句や十返舎一九(じっぺんしゃいっく)の「東海道中膝栗毛」、歌川広重の「東海道五十三次」にも登場している。今も、同店の「とろろ飯」を食べに東京などから足を運ぶ客も多い。

 その人気のもとは、素朴で自然な味わい。土づくりからこだわって育てられた自然薯(じねんじょ)を、焼津産のカツオだしと自家製白みそを合わせた秘伝のみそ汁や生卵、しょうゆ、マグロの煮汁と合わせる。そのとろろ汁を麦30%、米70%の飯にかけて食べると、サラサラしたのど越しで、滋味豊かな味わい。丁子屋14代目店主の柴山広行さん(36)は在来種の自然薯を次世代につなぐことにも熱心だ。


家康は心身を鍛えるためタカ狩りに精を出し、自ら漢方薬を調合するなど、日ごろから健康に気を配っていた(駿府城公園で)
地酒の名は「出世城」
 その昔、献上された静岡の酒を飲んで、そのおいしさを賞賛したという話が伝えられる家康。そんな家康にちなんで、静岡県のブランド酒米「誉富士」と静岡の水、酵母を使った地酒「出世城」を造っている浜松酒造(株)社長の中村保雄さん(54)。家康が29歳〜45歳まで住み、天下取りの夢をつかんだ浜松城が別名「出世城」とも呼ばれることから命名した。

 同社の杜氏で県内唯一の女性杜氏、増井美和さん(39)は酒蔵に入るようになって13年目。「水は冷たいしムロの中は暑い。でも、酒造りは面白い」と笑う。

「あつみ」の逸品といわれる白焼き重。ゆずこしょうを付けたウナギをたれの付いた飯と一緒に食べると、一口ごとにふわふわっとした食感が広がる
老舗の「うなぎ」
 家康が幕府を開いてから盛んに干拓が行われた江戸。そのころから江戸の庶民に食べられるようになったウナギを、明治期に浜名湖で養殖するようになったのも何かの縁か。浜名湖の漁師がウナギのかば焼きを始めて以来、百年の歴史を重ねてきた老舗がJR浜松駅徒歩5分の「うなぎ料理 あつみ」だ。

 初代渥美吉重から数えて5代目店主の渥美悟さん(43)は「食の演出には細かな配慮をしています」と話す。

 ウナギはもちろん浜名湖産、野菜は地場産、漬物は自家製。それに箸や水にもこだわりを見せる。「うまいのは当たり前。さらに、その上に何かを提供しないと」と熱く語る。うな重はもちろんうまいが、白焼き重も人気がある。


400年前の姿をそのままに残した久能山東照宮の社殿は国宝に指定されている
桃山の粋、久能山東照宮
 1616(元和2)年4月17日、徳川家康は隠居していた駿府城において死去した。その遺命によって建立されたのが久能山東照宮だ。

 日光東照宮より19年前に造られ、総漆(うるし)塗りで極彩色という桃山時代の技法が取り入れられた社殿。「建築様式やデザイン性などは、当時の先進的な建築技法が取り入れられています」と久能山東照宮権禰宜(ごんねぎ)の番定(ばんじょう)善寛さん(32)は話す。

 拝殿の上部に彫刻の「司馬温公の瓶(かめ)割り」が掲げられている。温公が子どものころ、大きな水瓶に落ちた友人を助けるため水瓶を壊した。叱られることを覚悟していたが、逆に父から褒められたという故事にちなんだもの。家康の「命を大切にせよ」という思いが込められているといわれる。


【徳川家康にちなんだ観光の問い合わせ】
静岡県文化・観光部観光振興課  Tel.054・221・3637

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