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  今月の旅情報 平成27年4月下旬号  
琵琶湖の恵み、「名水の里」へ  滋賀県/湖南市、東近江市、愛荘町

周囲の風景と調和してたたずむ善水寺の本堂。市内(湖南市)の常楽寺、長寿寺とともに「湖南三山」と呼ばれる
 県央に琵琶湖をひかえて水の豊かな滋賀県。周辺の山々から400を超える大小の川が滋賀の大地を洗うように湖へ流れ下る。名水伝説で知られる国宝・善水寺(湖南市)や、エコにも力を入れる文具工場「コクヨ工業滋賀」(愛荘町)など同県南東部を訪ね、豊かな風土に触れた。

桓武天皇を救った“善い水”
 国宝・善水寺。名前の通り、「善い水」が湧き出している古刹(こさつ)である。JR草津線甲西駅から約4キロ。雑木林に覆われた坂を上りつめた岩根山の中腹にあり、創建は和銅年間(708〜715)にさかのぼる。元明天皇の時代に鎮護国家の道場として草創されたのち、平安期に伝教大師最澄上人が再興。幸い織田信長の焼き討ちを逃れたため、南北朝時代に建立された本堂が今も静寂の中にたたずむ。檜皮(ひわだ)ぶきの屋根が優美な曲線を描く木造の入り母屋造り。職人技が生きる独特の荘厳な構えが見事だ。


滋賀県の6分の1の面積を持つ琵琶湖。約400の川が流入するのに対し、流出する川は1本のみ
 寺名に由来する水は、庭園の一角で絶え間なく湧き出している。かつて桓武天皇が病の折、最澄がこの水をすくい祈願して献じたところ、病はたちまち平癒したと伝えられている。このことが縁で善水寺の寺号を賜ったとか。「この寺の水を飲んだら水道の水は飲めなくなりますよ」と語るのは住職・梅中堯弘さん(54)。水は誰でも自由にくめる。雑味や臭みとは無縁。心の垢(あか)まで洗い流されるような心地よさが体中にしみわたる。

銘酒や地酒スイーツ…“湖国”が育てた名品
▼老舗の銘酒
 名水の里に銘酒あり。湖南市には鈴鹿山系の伏流水と近江産の米で仕込む北島酒造(Tel.0748・72・0012)がある。旧東海道に面して大きな暖簾(のれん)のかかる老舗らしい風格。近江の酒というと濃厚なイメージがあるが、当蔵の酒は全般に主張を一歩抑えたしとやかな印象だ。蔵内では試飲販売や酒蔵見学(事前予約)を行っている。


各蔵元名入りのおちょこに入ったチーズケーキ。酒粕は日ごとに熟成を増すため、賞味期限中も刻々と変化する味わいや香りが堪能できるのも魅力
▼地酒スイーツ
 東近江市にはユニークな地酒スイーツ「湖のくに 生チーズケーキ」がある。「県内各地の地酒も山から下りてくる水によって味が違います。酒粕(かす)を使って酒ごとの個性を楽しめるスイーツが作れないかという発想から生まれました」と発売元の「工房chou‐chou」(シュシュ、Tel.0748・23・6483)開発チームリーダーの大野眞知子さん(63)は話す。

 県内6蔵の酒粕を使い、蔵ごとの(きき酒ならぬ)きき酒粕で酒蔵めぐりの気分を楽しめるのがミソ。クリームチーズの濃厚な味わいの中にもふんわり銘酒の香りが感じられる。各蔵のおちょこに入ったパッケージデザインもおしゃれなこの商品は「ココクール マザーレイク・セレクション」に認定されている。

 同セレクションは滋賀の価値観を伝える商品やサービスを選定し、その魅力を発信する取り組み。滋賀ならではの資源を生かした、心の豊かさや上質な暮らしぶりに選定価値をおいている。

▼「エコ文具」も
 例えば、コクヨ工業滋賀が手掛ける琵琶湖のヨシを使ったエコ文具「リエデン」シリーズもその一つ。冬季に枯れたヨシを刈り取ることで新芽の成長を促し「生態系保全など琵琶湖の環境貢献につなげつつ、環境の押し売りではなく、手にとりたくなるようなテイスト」をコンセプトにアイデア豊かな文具を開発。

 中でも「旅のお供ノート〈たびあと〉」は滋賀を旅する人に愛用してほしいと考案されたお土産品。旅先で出会った人にサインやコメントを書いてもらうなどコミュニケーションツールとしての活用が狙い。旅した場所をマーキングできる滋賀の白地図付きで、ヨシを使用した紙の優しい色合いと質感にも癒やされる。

 同工場では、毎月2回の工場見学ツアー(約90分、要予約)を実施。見学後はリエデンや工場限定品も購入可。Tel.0749・37・8017


白地に鮮やかな藍色の絵付けが特徴の「近江下田焼」
▼近江下田焼
 湖南市には江戸時代からの歴史を持つ焼き物「近江下田焼」がある。いったんは廃窯となったものの1994年に再興。現在一人で伝統を継承し作品の創作に励んでいるのが小迫一(こさこ・はじめ)さん(51)。「小学生のときに初めて見た下田焼の器に魅せられたのが陶工を目指す動機になった」という。

 白い生地に呉須と呼ばれる釉薬(ゆうやく)を使用した鮮やかな藍色の絵付けが特徴。磁器に近い肌合いで、愛用したくなる温かみのある作品が多い。

 湖南市伝統工芸会館内では作品の展示販売のほか絵付け体験もできるので、旅の思い出にトライしてみては。 Tel.0748・71・4667


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