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噴煙上げるまちのシンボル・桜島 鹿児島県/鹿児島市 |
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JR鹿児島中央駅近くから眺めた桜島。手前の川は甲突川 |
噴火や地震など災害が多い半面、豊かな森や水、農産物・海産物など自然の恩恵も多く受けている日本。そんな自然と人々の共生が分かりやすいのが鹿児島市・桜島だ。古くから火山の噴火などで被害を被ってきたが、今も多くの人々が住み続けている。全国に36カ所ある日本ジオパーク(大地の公園)の一つ、桜島で大地の息吹を体感してきた。
大噴火の威力、一目で
桜島は鹿児島市街から約4キロのところに位置しており、北岳、南岳によって形成されている複合火山である。現在も活動中の、世界有数の活火山を案内してくれたのはNPO法人桜島ミュージアムの大村瑛さん(28)。神奈川県横須賀市出身だが、地方で仕事に就きたいと思い桜島を選んだという。
桜島はもともと錦江湾に浮かぶ島だったが、1914(大正3)年の大噴火で大量の溶岩が流出し、大隅半島と陸続きとなった。
鳥居の笠木が埋もれてしまい、大正大噴火のすごさが分かる |
この時の噴火のすごさが一目で分かるのが、「黒神埋没鳥居」という場所だ。大正の大噴火で火山灰や軽石が1日と少しの間に約2メートルも積もり、高さ約3メートルあった腹五社神社の鳥居の上部(笠木)だけが地上に出ている。当時の村長が大噴火の記憶を後世に残すため埋もれたままにしたので、私たちも目にすることができるのだという。
桜島は、見る場所によってさまざまな姿を見せる。その一つ、黒神ビュースポットから眺めていると時々「ゴォーッ」というジェット機のエンジン音のような音が聞こえる。大村さんは「地下から小さな隙間を通ってガスが噴き上がる時の音です。夜、ここから噴火口(昭和火口)が真っ赤に見えることもあります」と話す。生きている地球の鼓動を感じる。
大正以外でも記録に残るだけで「文明」「安永」「昭和」など大噴火を繰り返してきた桜島。2014年も約450回、今年も2カ月で100回を超える爆発的噴火(震動や噴石を伴う大きな噴火)が起きているが、今も5千人近くの人々が住み、生活を続けている。 |
ギネスブックに記録されたのは重さ31.125キロの桜島大根。手にしているのは約8キロ(ファームランド櫻島) |
「桜島大根尽くし」(CAFEしらはま)は季節によって内容が変わる |
桜島の野菜堪能
桜島では緩やかな斜面を利用した農業が活発だ。野菜や果物などを無農薬・無化学肥料で栽培している「ファームランド櫻島」代表の村山利清さん(68)は「噴火した際に飛んでくる軽石は酸素と水を含み、干ばつになっても作物が枯れることがありません」と話す。
桜島といえば世界一大きな桜島大根。村山さんの妻が運営する「CAFEしらはま」では、季節の野菜を使ったメニューが人気。「桜島大根は甘くて、煮崩れしません」 |
“英傑のまち”の散策も
時間に多少の余裕があれば、鹿児島市内も散策してみたい。そこで頼りになるのがボランティアガイドの人たち。今回は約2時間かけて、「近代日本を築き多くの人材を輩出した加治屋町コース」を体験した。
幕末から明治にかけて多くの人材を輩出した鹿児島。中でも加治屋町周辺では西郷隆盛や大久保利通ら多くの偉人が生まれ育った。
「その理由は郷中(ごじゅう)教育にあったといわれています」とボランティアガイドの烏山信幸さん(66)。郷中という同一地域内に住む武家の青少年たちがしつけや武芸の鍛錬をする薩摩藩独特の教育制度のこと。銅像を眺め、その顕彰碑を読んでいると、倒幕から明治維新、日清、日露戦争と続く日本の歴史の大きな節目を、たった一つの町が背負ってきたように感じられた。
■かごしまボランティアガイドとめぐる「鹿児島ぶらりまち歩き」■
24コースから選ぶ事前予約制。所要時間1時間〜2時間。参加料1人500円(高校生以上)。鹿児島まち歩き観光ステーション Tel.099・208・4701 |
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【桜島へのアクセス】
鹿児島港と桜島港を約15分で結ぶ桜島フェリー(Tel.099・223・7271)が24時間運航していて便利。今年で就航80周年を迎えた。 |
【おすすめ情報】
桜島のことを深く知るには火山のミニ博物館「桜島ビジターセンター」(Tel.099・293・2443)へ。
桜島の特産品を求めるには「道の駅『桜島』火の鳥めぐみ館」(Tel.099・245・2011)、穏やかな錦江湾を眺めながらのんびりしたい人には「桜島マグマ温泉」が人気の国民宿舎「レインボー桜島」(Tel.099・293・2323)がおすすめ。
観光の問い合わせは鹿児島市観光交流センターTel.099・298・5111 |
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