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青銅器コーナーでは荒神谷から出土した銅剣358本をはじめ、周辺遺跡から出土したほぼすべて実物の青銅器を一堂に展示、見るものを圧倒する(一部レプリカも) |
神話の時代を伝える古事記・日本書紀で生き生きと記述される島根県出雲地区。同地はまた、律令時代に全国で編まれた地誌「風土記」が同地版のみ写本として現在まで伝わるなど、“古代の足跡”がいまだたどれる地だ。さらには、いにしえから遷宮を繰り返す出雲大社や、複数の古代遺跡より近年発見が相次ぎ、神話のベールが少しずつ剥がれ歴史の実相が暗闇からうっすらと浮かび上がりつつある。古代の手掛かりを求めて出雲へ旅に出よう。
高さ48メートルの大社“再現”
「神話のふるさと」といわれる出雲だが、実は神話での隆盛を裏付けるような考古学的発見のウエートが少なく、以前は古代史研究において出雲の評価はそれほど高くなかった。
しかし1984年に荒神谷遺跡(出雲市)から358本もの銅剣ほか青銅器が一気に発掘されると、周辺遺跡からも大量の銅鐸(どうたく)が出土。そして2000年には出雲大社境内から、本殿を支えたと思われる巨大な3本の柱の遺構が発見され大社のいにしえの姿を探るものとして物議を醸した。
これら一連の発見により古代出雲の勢力・文化のポテンシャルが大きく再評価され、その大発見にふさわしい情報発信の形も模索された。そして07年、発掘した実物そのものを一堂に紹介する県立古代出雲歴史博物館が、同地の古代を象徴する出雲大社の東隣の地に開館する。
同館の目玉であるテーマ別展示では「出雲大社」「出雲国風土記」「青銅器」の3テーマで古代出雲を紹介。中でも大社に関しては、ロビーに巨柱遺構の実物を展示、その大きさが実感できる。
16丈(48メートル)説に基づく10分の1の中世出雲大社の模型。地上と本殿を結ぶ階段は100メートル以上もの長さとなるが、階段があるはずの大社前面は現在、多くの構築物があり発掘が困難。決定的証拠を示すことが難しいことから多くの異論も寄せられている |
現在8丈(約24メートル)の高さを誇る出雲大社本殿だが、古くは16丈(約48メートル)、さらに古代には32丈(約96メートル)にも及んでいたとの言い伝えがあるという。中世の絵図面などにも巨大な大社が描かれているものの、本当に天にそびえる壮麗な神殿が存在したのか—。江戸時代から論争が絶えなかったが00年の発見により言い伝えがにわかに現実味を帯び、専門家らの議論もさらに活発化した。
館内には16丈説の10分の1となる、平安時代の大社の巨大模型を展示。また出土した巨大柱から推測した、5人の専門家それぞれの仮説に基づいた模型も並列している。専門学芸員の岡宏三さん(48)は「未来の発見に判断を委ねることになりますが、来館者一人一人に想像してもらいたい。また館内の展示物はほぼ実物ばかり。本物を見て古代出雲の姿について想像をめぐらしてほしい」と解説してくれた。
開館時間は午前9時〜午後5時(3月〜10月は6時まで)。第3火曜定休。常設展示入館料610円。イヤホンガイド無料。問い合わせは Tel.0853・53・8600 |
「古代出雲の華めぐり」(3564円)。魚や貝などの食材と、極力当時の素朴な調味料を使用、古代の味覚を味わえる |
「風土記」の食材で“古代食”
出雲大社のお膝元で1882(明治15)年から営業している老舗料亭・看雲楼。同料亭では奈良時代から平安時代にかけて出雲地方で食されたであろう食事を、「出雲国風土記」などの文献に記されている食材・調味料を使用し、提供している。ただし文献には食材が載っているものの調理法は記載されていないため、想像を交え現在の調理法で復元している。
メニューは、赤米(古代米)飯のハマグリのせ、タイのおつくり、煮サザエ、ひじきの煮物、古代ぼた餅、古代チーズ風デザートなど。
大女将(おかみ)の安井幸子さん(65)は、「味付けは藻塩を中心とした素朴なもの。油分がほぼないためこってり感がなく、シニアの方にもカロリーを気にせず食べていただけます」と勧めてくれた。
営業時間は午前11時半〜午後2時、5時半〜9時(ラストオーダー8時)。不定休。古代食のコースは1728円〜。要予約(2人前から、2日前までに)。看雲楼 Tel.0853・53・2017 |
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【出雲の観光の問い合わせ】
にほんばし島根館 Tel.03・5201・3310 |
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