|
「陽気な母さんの店」で笑顔を見せる友の会の会員たち。同店の駐車場にはいつも多くの車が止まり、にぎわいを見せている |
秋田県北部に位置し、世界遺産白神山地に程近い大館市。忠犬ハチ公の故郷、“きりたんぽの本場”として知られ、農家民宿や体験型観光が盛んだ。今回は農家民宿に泊まり、旬の作物の収穫や郷土料理作りを体験。新米と比内地鶏の相性が抜群のきりたんぽ鍋に舌鼓を打ち、「陽気な母さん」の愛称で親しまれる地元の女性農業者たちとのあたたかい交流も。旬の味覚と人のぬくもりに触れ、「第2の故郷」を体感してみては—。
「陽気な母さんの店」
「ハチ公物語」で有名な秋田犬(国指定天然記念物)や伝統的工芸品の「曲げわっぱ」など、大館には素朴な雰囲気が似合う。駅前には愛らしいハチ公像。また、老舗駅弁屋・花善が旅人を出迎える。昔ながらの製法・味で炊き込んだ「鶏めし弁当」は長年、愛されてきた大館の味だ。
大館の“元気”な話題といえば、「陽気な母さんの店」。農家所得の向上や消費者との信頼関係の深化、地域活性化などを目的に地元の女性農業者88人が友の会を結成。2001年4月、民設民営の体験交流型直売所を立ち上げた。同会会長の石垣一子さん(60)は話す。「作り手の思いと食べ手の交流がないと、消費拡大につながらない。安心で安全、体にいいものを選ぶ時代になったと気がついた」
「比内地鶏 大館 元気丼」 |
同店ではネギやリンゴなど新鮮な農産物と手作り弁当や総菜の販売のほか、そば打ち、田舎スイーツ作りなど多彩な体験メニューを用意。併設する食堂では昨年10月に商品化された「比内地鶏 大館元気丼」(840円、要予約)が味わえる。もちもちした粘りのある「あきたこまち」に比内地鶏、山の芋、トンブリという大館名産の厳選食材が詰まった“農家めし”。中でも比内地鶏は、薩摩地鶏、名古屋コーチンと並ぶ日本三大美味鶏の一つ。適度な歯応えと風味を持ち、かむほどにうま味が出る。「畑のキャビア」とも呼ばれるトンブリのプチプチした食感もよく、栄養価が高くてヘルシーな丼だ。
陽気な母さんの店 Tel.0186・52・3800
「たんぽのおいしい食べ方、本場の味を伝えたい。それが消費拡大につながる」と話す石垣さん。米粒が残る程度につぶす「半つぶし」というつぶし具合と、食材を入れる順番がおいしさの秘密だという |
“母さん”ときりたんぽ作り
大館の魅力をさらに味わうには“母さん”たちが運営する農家民宿がおすすめ。田んぼ作業や野菜・果実の収穫、漬物作りなど季節に応じた田舎体験が味わえる。12年9月に複数の友の会会員が開業し現在では16軒を数える。市内には1500年前の発祥といわれる大滝温泉などがあり、宿泊先のオーナーが最寄りの天然温泉へ送迎。また、夕食は本場のきりたんぽ作りに挑戦するだいご味も。
たんぽを焼く様子 |
県北の大館・北鹿地方が発祥とされるきりたんぽは、新米と比内地鶏のうま味が凝縮された“郷土の味”。米はうるち米を使い、炊き上がったご飯をすりこ木で7割ほどつぶし、秋田杉の串に巻き付けたものが「たんぽ」。たんぽは焼いて甘いみそを塗って食べるほか、食べやすく切ってきりたんぽ鍋として賞味。比内地鶏のガラでとっただしとしょうゆのスープに、比内地鶏の肉、ゴボウ、キノコ、たんぽ、ネギの順に具を入れ煮立てる。味がしみる直前にセリを加え、火が通れば完成だ。
鍋を囲み、石垣さんは農村の魅力や自身のなれ初めを話してくれた。“農家の嫁”の苦労を感じさせない笑顔で「夫に認められたいという思いが原動力です」。夫や夫の両親を大事にすることを第一に考えながら、自己実現の場所も得た。「農家に嫁いで子育てを終え、田舎を離れようとした人もいた。誰かに見てもらいたいという思いが強いし、『母さんの店』が生きがいになっている人は多い。ここでは四季の移ろいを肌で感じられます。今いる環境を楽しめば次の展開にもつながる。農村の良さを発信し、今は息子たちにつなぐために頑張ります」
1泊2食付き1人7500円(11〜4月は暖房費として別途400円)。要予約。
「白神生ハム寿司(ずし)」 |
芳醇な「白神生ハム寿司
スペインのハモン・セラーノ製法をもとに、大館の気候に合わせて改良した独自の製法で作られる「白神生ハム」(製造:白神フーズ(株))。秋田県産の三元豚を原料に1年以上じっくりと熟成。芳醇(ほうじゅん)な味と香りが特徴のこの生ハムを活用したのが「白神生ハム寿司(ずし)」だ。市内の寿司なにわ(Tel.0186・42・0560)などでは3種類(にぎり2種、押し寿司1種。1貫250円)を提供している。要予約。 |
|
【アクセス】
(1)羽田—大館能代空港は70分。同空港から大館駅までリムジンバスで55分。
(2)東北新幹線盛岡駅から高速バス利用。大館まで計5時間。
【観光の問い合わせ】
観光全般、農家民宿については大館市まるごと体験推進協議会 Tel.0186・43・7072 |
|
| |
|