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大雪山の紅葉。大雪山国立公園の98%余りは国有地。北海道有地などを含めると99%以上が公有地だ |
日本一早い紅葉へ—。大雪山は北海道中央部の火山群。古来、アイヌの人々はその雄大な山々を「カムイミンタラ」と呼んできた。アイヌ語で「神々が遊ぶ庭」の意味。広大な“庭”は間もなく紅葉に染まり、やがて厚い雪に覆われる。雪解け水は地中に染み、長い年月をかけ麓の名水になる。荘厳な山の自然に接し、麓の温泉につかり、花々のガーデンを歩いた。
日本一早い紅葉
標高2千メートル級の山々から成る大雪山。一つの山の名称ではなく、北海道中央部の山々の集まりを指す。緯度が高いため、本州の3千メートル級の山岳に匹敵する高山環境。大雪山国立公園の面積は約23万ヘクタールで、神奈川県とほぼ同じ。日本で最も広い国立公園だ。
峰々の間に広がる溶岩台地は春以降、200種以上の高山植物の群落に彩られる。まさに“神々が遊ぶ庭”にふさわしい景観。8月下旬から始まった紅葉は例年、9月〜10月初旬、見頃になる。残暑の東京とは別世界の“日本一早い紅葉”。大雪山の秀峰の一つ・黒岳(標高1984メートル)の七合目までは、ロープウエーとペアリフトを乗り継いで気軽に行ける。ダケカンバの黄色、ナナカマドの赤、ハイマツの緑色…。四方と眼下の錦秋は息をのむほどの美しさだ。50年以上、大雪山の自然を撮り続ける写真家・市根井孝悦さん(75)は目を輝かせる。「紅葉も花々と同様、景色が毎日変わる」
層雲峡温泉と黒岳の五合目を結ぶロープウエー。五合目付近には遊歩道も整備されている |
名湯と峡谷
大雪山の周辺は温泉も数多い。黒岳のロープウエー駅がある層雲峡温泉は大雪山観光の拠点。癖のない単純硫黄泉が、体を優しく包み込む。
石狩川の源流域に沿って約24キロ断崖絶壁が続く層雲峡は、川の流れが1万年以上にわたって、噴火の堆積物を浸食した峡谷だ。温泉街の眼前にも荒々しい地肌を見せてそびえ立つ。温泉街には、市根井さんの写真を展示する「層雲峡・大雪山写真ミュージアム」も。
山が育む名水
大雪山が育んだおいしい水—。「北海道大雪山 ゆきのみず」は、大雪山の地中で何十年もかけて“ろ過”された天然水。原水の成分にあえて手を加えない「ナチュラルミネラルウオーター」だ。
ビール会社で長くビールや醸造用水の研究に関わった村上淳さん(67)=札通商事(株)取締役統括部長=は現在、「ゆきのみず」の品質管理に携わる。「日本人が慣れ親しんでいる軟水。ミネラル類のバランスが極めて良く、調理やお茶にもおすすめ」と話す。
「ゆきのみず」を生産・販売する(株)ロジネットジャパン(本社・札幌市)は麓の上川町に採水地・工場を持ち、町と手を携え廃校になった小学校を「水の学校」にする計画を進めるなど、大雪山の自然保護活動にも力を注ぐ。
ペットボトルの「ゆきのみず」は530ミリリットルと2リットルの2種類。(株)ロジネットジャパン「ゆきのみず販売推進室」フリーダイヤル0120・65・5959
「大雪 森のガーデン」 |
ガーデンと美食
北海道の気候や風土を生かした洋式庭園は、大自然とは一味違う美しさ。大雪山を望む丘陵に今春グランドオープンしたのは「大雪森のガーデン」だ。色とりどりの花々が咲き競う「森の花園」と、木々の緑が高原の風に揺れる「森の迎賓館」。趣の異なる二つのガーデンが整備されている。
すぐ近くの小高い丘には、美食家をうならせてきた三國清三がオーナーシェフを務めるガーデンレストラン「フラテッロ・ディ・ミクニ」(Tel.01658・2・3921)がある。新鮮な道産食材を生かしたメニューが評判だ。同店は「ゆきのみず」を調理に用いるほか、食事中の水としても提供する。
「大雪 森のガーデン」は10月19日(日)まで営業し、4月下旬ごろまで冬季休業予定。一般800円。Tel.01658・2・4655 |
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松見大橋と樹海 |
おすすめ情報
富良野や美瑛(びえい)、旭川…。上川町を起点にした周遊観光も魅力いっぱいだ。有名な観光地が多い半面、あまり知られていない「穴場」も少なくない。上川町と上士幌(かみしほろ)町の境界付近にある三国峠は標高1139メートル。北海道の国道では最も高い峠だ。人工物が全く目に入らない“手つかずの自然”を望むことができる。三国峠の近くから見る松見大橋と樹海も絶景だ。 |
【アクセス】
羽田—旭川空港は約1時間半。旭川空港から上川町役場までは、車で1時間余り。
【観光の問い合わせ】
上川町産業経済課 商工観光グループ Tel.01658・2・4058
層雲峡観光協会 Tel.01658・2・1811 |
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