|
春には断崖に菜の花が咲き乱れる菜種五島 |
日本列島は、はるか昔、ユーラシア大陸の一部だったという。その後、大陸の縁辺が割れて日本海となり、日本列島が形成された。そのダイナミックな列島誕生の痕跡を見ることができるのが、鳥取県岩美町の浦富(うらどめ)海岸だ。日本海の荒波と風雪によって浸食された断崖、透明度の高い海に浮かぶように見える奇岩、白砂青松の渚(なぎさ)—。そんな景観を、自然歩道を歩いたり遊覧船やカヌーに乗ったりして体験できる岩美町を旅した。
海沿いの歩道
浦富海岸は、京都府京丹後市の経ケ岬から鳥取市の白兎(はくと)海岸まで東西110キロ、南北最大30キロのエリアにまたがる山陰海岸ジオパークの一部を形成している。
「浦富海岸はそのほとんどで花こう岩の海食地形が見られます」と話すのは山陰海岸ジオパーク公認ガイドの福原陽一郎さん(66)だ。海食地形とは、波浪や潮流など海水の運動で岩石が浸食された状態のこと。
浦富海岸で見られる花こう岩は、およそ6000万年も前にマグマが噴火せず地中深く固まってできた岩石が地上に隆起したものだ。6000万年前といわれてもピンとこないが、そのころの日本はまだ現在のような弧状列島ではなく、ユーラシア大陸の東端にあったという。
千貫松島の洞門を小型船でくぐる |
海岸線に沿って自然歩道が整備されている浦富海岸。歩いてみると結構起伏に富んでいる。パノラマのような景色に散策の疲れも忘れる。小さな岬が海水の浸食で離れ岩になった菜種五島や穴が貫通した海食洞門がある千貫松島など…。この辺りは遊覧船のコースになっており、船からも景観が楽しめる。
さらに、自然歩道を羽尾岬基部のポケットビーチ、熊井浜に降りると、その奥に「鴎鳴荘」が見えてくる。国連初代日本大使、澤田廉三の別荘跡だ。澤田は「地中海の夕日が沈む風景より、この別荘から見る夕景のほうが素晴らしい」と絶賛していたという。
このほか岩美町には多くの窯元や湯かむりで知られる岩井温泉がある。
ところでジオパークとは「大地の公園」という意味。浦富海岸が含まれる山陰海岸ジオパークは、日本に6カ所ある世界ジオパークの1つ。地球科学の研究や教育への活用とともに、観光資源として地域活性化に役立たせるのが目的だ。
クリアカヌーからは魚などの 生態も間近に見ることができる |
クリアカヌー体験
本州屈指といわれる透明度25メートルの海を体験しようとクリアカヌーに乗った。菜種五島など波で浸食された奇岩を訪ね、洞門をくぐる。船体が透明なため、海の上を浮いているような不思議な感覚。カヌーの後部に座ったベテランガイドと一緒に2人でこぐので初心者やシニアでも安心だ。9月中旬ごろまで体験できる。
クリアカヌーなど浦富海岸での自然体験を希望するなら、岩美町立渚交流館(Tel.0857・73・0118)へ。
「くいもんや 海慶さざなみ」
おすすめの海鮮丼 |
日本海の恵み
日本海形成と大地の動きから生まれた岩美町の多様な風土はモサエビ、岩ガキ、白イカ、松葉ガニなど、さまざまな生き物を育む。そんな新鮮な魚介類を食べさせてくれると地元で評判なのが、「くいもんや 海慶さざなみ」(Tel.0857・72・0305)。同店おすすめの海鮮丼は、エビ、カンパチ、イカなどを、すった山芋と一緒にほおばる。茶わん蒸し、サラダ、汁付きで1360円。 |
|
【観光の問い合わせ】
岩美町観光協会 Tel.0857・72・3481 |
|
| |
|