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尾道といえば坂のある風景。晴れた日はもちろん、しとしとと雨にぬれた石畳もムードがある。撮影スポットが多いので、ぜひカメラ片手に散策を |
坂道が独特の風情を醸すまち・尾道市(広島県)。同市の持つたたずまいは訪れる人を魅了し、文学作品の舞台や、映画のロケ地になることも多い。また同市は、広島県と愛媛県を9つの橋で結んだ「瀬戸内しまなみ海道(西瀬戸自動車道)」の広島側拠点としても知られる。町並みと瀬戸内の潮風が織りなす旅情を求めて尾道周辺を巡った。
町のあちこちに潜んでいる福石猫。1匹1匹顔つきも異なる。不意に見つけると思わずうれしくなる |
招き猫美術館や“福石猫
山陽地方の中南部に位置し、瀬戸内海に面した尾道は古くから海運で栄えた。また山肌の斜面に寺社や古民家がひしめく地区一帯は小京都として名高い。のんびりと自分のペースで尾道らしい風景を楽しむなら、同地区の坂道散策がおすすめだ。「放浪記」などで有名な作家・林芙美子の書斎が再現されている文学記念館や志賀直哉旧居、アララギ派のリーダーとして活躍した歌人・中村憲吉旧居など趣ある建物が点在する。
また、狭い石畳の路地が入り組んだ一帯は、ぶらぶら歩き回るだけでも楽しい。唐突にしゃれたカフェが出現したり、古色蒼然(そうぜん)とした風情ある建物に出合えたり…。築90年の古民家を利用した「招き猫美術館」(Tel.0848・25・2201)もそんなひとつ。1997年に開館した同館は、全国から集められた招き猫約3000体を展示している。
路地裏には猫がよく似合う。散歩する猫の姿もよく見かけるが、町のいたるところで、石に猫が描かれた「福石猫」に出合うことも。絵師の園山春二氏が尾道に福をもたらすようにと、大小さまざまな石にかわいい猫を描き町のあちこちに“解き放った”のだとか。福石猫を探しながらの散策もちょっとした楽しみだ。 |
浄土寺の境内。616年、聖徳太子の創建と伝えられる。多宝塔(国宝)=写真奥=など文化財が豊富な“国宝の寺”だ |
古寺を巡って散策
北前船の潮待ち港として栄えた尾道には、驚くほどたくさんの寺社がある。狭い範囲内に実に20以上もの寺が林立している。海運業に携わっていた商人らが商売繁盛や旅の安全を願って寄進することが多かったという。
尾道観光協会は、おすすめの古寺巡りコースを設定。尾道観光の“王道”だ。
眼下に尾道水道が一望できる尾道のシンボル・千光寺や、文化財の宝庫で、小津安二郎監督「東京物語」のロケ地としても有名な浄土寺など時間の許す限り回りたい。石造りの延命門が特徴的な持光寺では、願いを込めて自分だけの仏を作る「にぎり仏作り体験」(1500円)も。 |
多々羅大橋。鳥が羽を広げたような形をした、美しい斜張橋。ほかにも世界初の三連つり橋・来島海峡大橋など多様な橋そのものもしまなみ海道の観光資源となっている |
しまなみ海道をサイクリング
広島と愛媛の島しょ部を9つの橋で結んだ瀬戸内しまなみ海道。本州と四国の架橋3ルートの中で、唯一自転車で渡ることができるのが、しまなみ海道の尾道—今治ルートだ。
しまなみ海道のおすすめは何といってもサイクリング。世界有数の斜張橋・多々羅大橋など、橋の大きさが体感できる。穏やかな瀬戸内海の風景に包まれながら、潮風を浴びて走る爽快感は格別だ。自転車は尾道市内に8カ所のレンタサイクルターミナルがあり、乗り捨ても可能なため気軽にサイクリングができる。
同市の島しょ部は、レモンやハッサクなどかんきつ類の宝庫として知られるほか、ベストセラー小説「村上海賊の娘」(和田竜著)などでも有名な村上水軍ゆかりの地でもある。因島では、村上水軍が使用したという武具や甲冑(かっちゅう)などを展示する因島水軍城(Tel.0845・24・0936)や村上氏のぼだい寺金蓮寺などが見どころ。8月30日(土)には、村上水軍を再現する「瀬戸内水軍まつり尾道〜因島水軍スピリッツの継承〜」(Tel.082・513・3450)も開催される。
さらに自転車を進め、国産レモン発祥の地といわれる生口島(瀬戸田町)には、世界のかんきつ類約500品種を収集・展示しているシトラスパーク瀬戸田(Tel.0845・26・3030)など観光スポットも豊富だ。 |
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