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棟の両端の千木(ちぎ)と棟飾りの勝男木(かつおぎ)が修復された出雲大社本殿の大屋根。勝男木などを覆っている銅板の傷みを少なくする「ちゃん塗り」という技法を約130年ぶりに復活させた |
「古事記」に登場する大国主大神(オオクニヌシノオオカミ)を祭神としてまつる出雲大社(島根県出雲市)で行われている「平成の大遷宮」。約60年ぶりの本殿修造が終了し、5月10日には大国主大神を仮殿から本殿へと移す「本殿遷座祭」が執り行われた。20年に1度行われる伊勢神宮(三重県伊勢市)と同じ年に出雲大社の遷宮が行われるのは実に60年ぶりのこと。遷宮で注目される、日本創世の神話に彩られた出雲大社を訪ねた。
檜皮64万枚の大屋根
国宝に指定されている出雲大社の本殿は造営された1744年以来、1809年、1881年、1953年と一定期間ごとに3度にわたって修造が行われてきた。
建て替えずに、これまで使用してきた材料をなるべくそのまま再使用する方針で行われたという今回の修造。長期間の雨や風などで腐朽した部材の修理に限られたが、それでも完了するのに平成20年から今年まで5年間かかった。
なにせ本殿の高さは約24メートルあり、檜皮(ひわだ)ぶき大屋根は面積約180坪、軒先の厚さが約1メートルと巨大だ。大屋根にはヒノキの樹皮である長尺の檜皮が約64万枚も使われているというから並大抵の修復ではない。ちなみに檜皮の重さは47トン、樹齢100年以上のヒノキ15万本に相当するという。ただ、「大屋根の中の状態は非常によかった」と神職の松井恵治さん(51)。使える檜皮は再利用して、職人の手によって丁寧に竹釘(たけくぎ)で固定され、ふき直された。
今回の「平成の大遷宮」では、今後60年もつかどうかを基準にしながら補修を進めたというが、次の遷宮を考えると気になるのがヒノキなどの素材。すでに山陰地方では良質の檜皮がとれなくなっているそうで、今回の修造でも岡山、広島、兵庫各県の檜皮が使われたという。そのため、出雲大社では昨年から広島県三次市でヒノキの植林を始めている。
また、職人の匠(たくみ)の技の伝承も不安材料の一つ。出雲大社には多くの摂社・末社などがあり、これらの修造は2年半後まで続く。
なお、11月13日(水)からは八百万(やおよろず)の神々が出雲大社に集まる「神在祭(かみありさい)」が催される。
日本の鳥居で6番目に高い宇迦橋の大鳥居 |
23メートルの大鳥居
出雲大社本殿に向かって真っすぐに延びる参道や神門通りには四つの鳥居がある。一の鳥居は「宇迦(うが)橋の大鳥居」と呼ばれ、高さが本殿より1メートル低いだけの23メートル、中央部の額は畳6畳分の大きさがある。また、4つの鳥居は石、木、鉄、銅とそれぞれ違う素材を使ってあるのも特徴だ。
味の名物「ぜんざい」
神門通りに沿って並ぶのは老舗旅館やそば店、菓子店、土産物店など。これらの店をぶらぶらと歩き、のぞいてみるのも楽しい。
食べ物の名物は出雲ぜんざい。神事の神在祭の折に振る舞われたという出雲地方の「神在(じんざい)餅」が始まりだという。その「じんざい」がなまって「ずんざい」「ぜんざい」となり、京都に伝わったといわれる。地元のもち米やそばがきを使ったぜんざいが食べられる。
また出雲そばは、そばの実を殻ごとひくので色が黒く、香りが高いのが特徴。新鮮な魚を加工した「かまぼこ」もおすすめの一品だ。 |
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周辺の「見どころ」へも
古代出雲歴史博物館
国宝である銅剣や銅鐸(どうたく)、銅矛を一堂に展示している。「出雲国風土記の世界」「出雲大社と神々の国のまつり」「青銅器と黄金の大刀」「神話シアター・神話展示・神話探検」「島根の人々の生活と交流」という5つのテーマ別に展示してある。特に中央ロビーに展示する出雲大社境内遺跡より出土した巨大柱(宇豆柱)や高層神殿復元模型、銅剣などは見もの。出雲を理解するうえでぜひ訪ねたい。観覧料600円。
ムクの巨木 |
命主社
太古から神とあがめられた山や大木、巨石などが数多く残る出雲。数々のパワースポットの一つが出雲大社の摂社、命主社(いのちぬしのやしろ)。古代の磐座(いわくら=神の御座所)が神社に発展した例として貴重な神社だ。
同神社前には樹齢1000年といわれるムクの巨木がそびえる。
稲佐の浜
出雲大社から西へ阿国通りを真っすぐ行くと稲佐の浜に出る。この浜は国譲り、国引きの神話で知られ、旧暦10月の神在月(かみありづき)に全国の八百万の神々を迎える浜としても知られる。 |
【出雲観光の問い合わせ】
出雲観光協会 TEL.0853・53・2112 |
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