|
ワイナリーの自社農園。心地よい風がわたる |
ワイナリー見学ツアーも
京都府と兵庫県にまたがる丹波地方は黒豆や栗、京野菜など大地の恵み豊かな食の宝庫。そんな地にあって、食材にあうワイン造りに取り組む丹波ワイン(京都府京丹波町)に注目、同ワイナリー(ワイン醸造所)の見学ツアーを体験した。日本各地の国産ワインが個性を競う中、丹波ワインの魅力とは? 五感でワインを堪能した後は、丹波に関わり深い明智光秀ゆかりの地へ足をのばした。
近年、国産ワインへの期待が高まっている。地場のぶどうを醸し、土地の個性を生かしたワインを造ろうと努力を重ねる生産者が増えているからだ。丹波ワインもそんなワイナリーの一つ。
京都市街から車で約1時間。ぶどう畑の広がる敷地にはサロンバーやショップなどを備えたおしゃれなワインハウスがあり、見学ツアーはこの建物から出発する。この日の案内役は引原隆さん(47)。ワインのミニ知識なども交えながら分かりやすい解説で醸造所や畑を案内してくれた。
説明によれば創業は1979(昭和54)年。それまで畑違いの仕事をしていた初代社長が海外出張の折、現地で味わうワインのおいしさに驚いて日本に持ち帰ったところ、現地で飲んだときほどおいしく感じられない。理由を考えてみると、料理や雰囲気など環境の違いに加え、ワインと同じ大地で培った食材とともに味わうことの大切さに思い至った。そこで一念発起。丹波の風土にあったワイン造りへの挑戦が始まったという。
試飲ができる丹波ワインのサロンバー。館内にはレストランやショップもある |
和食とも好相性
創業後30年余りを経て年間の生産本数は中規模レベルの約50万本に成長した。「とはいえ自社畑から造るワインは2万本がやっと。徐々に畑を増やしていきたい」と引原さん。案内された自社畑は日本でよくみられる棚式ではなく垣根式。赤白混在で約40種のぶどうが栽培され「力を入れていきたいのはピノ・ノワール」と強調する。フランスのブルゴーニュ地方を代表する高貴な品種で、世界最高価格のワイン「ロマネコンティ」もこの品種から造られる。気候や土壌のより好みが激しく日本での栽培は難しいといわれる中、丹波ワインでは順調に成長を続けている。しっかり濃い赤というより、きれいな酸味を含んだしなやかさが魅力。和食との相性も良い。
同ハウス内のレストランでは、窓越しにぶどう畑を眺めながらワインとともに丹波の食材を生かした料理が味わえる。 |
明智光秀が築いたといわれる天守閣を再建した福知山城。内部は郷土資料館として公開 |
明智光秀ゆかりの地
日本人がワインを飲み始めたのはいつごろからだろう? 確かなのは織豊時代からで、外国文化好きだった織田信長も飲んだといわれている。
その信長の重臣だった明智光秀は丹波の地と関わりが深く、京都と兵庫にまたがる「大丹波」と呼ばれる地域には光秀ゆかりの地が数多く点在する。中でも丹波平定後に自ら治めた亀山城や福知山城は有名だ。これらは明治維新後の廃城令で解体されたが、亀山城は石垣が修復されて往時の面影を残し、天守閣が再現された福知山城は町のランドマークとなっている。
光秀といえば主君信長を討った反逆人のイメージが強い一方で、教養高い文化人、側室を置かない愛妻家、領民から慕われた名君などの逸話も残る。光秀を祭る日本で唯一の御霊神社が福知山にあるのも、光秀の善政に感謝する人々の心と関わりが深いようだ。地元では、光秀公研究会が「日々の地道な活動の中で小さな発見を重ねている」と語る。その光秀が生前にワインを口にしたかどうかは、残念ながら史実にないようである。 |
ワイナリー見学ツアー
丹波ワインのワイナリー見学は平日午前11時と午後2時の2回。土日祝日は午前11時〜午後4時の毎時0分にスタート。所要約1時間。無料。 |
|
| |
|