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七尾湾と能登島に沈む夕日は、和倉温泉の風景を代表する美しさ |
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七尾湾を望む能登の名湯・和倉温泉(石川県七尾市)。塩分の濃い泉質は、皮膚病や神経痛などに効用があるとされ、「体がぽかぽか温まり湯冷めしない」と評判だ。温泉街の整備も進む海辺の湯街。「七福神福々めぐり」や「スイーツめぐり」など、街歩きを楽しむ取り組みも次第に反響を広げている。
和倉温泉の温泉街では、源泉が湧く3カ所で誰でも「温泉たまご」作りができる=湯元の広場 |
弁天崎源泉公園の手湯。七尾湾を眼前に望み温泉情緒に浸ることができる |
平安時代の開湯から1200年以上の歴史を誇る和倉温泉。古くは海中に源泉が湧き、湯気の立つ海で白サギが羽を休めたという伝説を持つ。江戸時代初期、加賀藩主・前田利長は、腫れ物の治療のため源泉を取り寄せた。和倉温泉観光協会・和倉温泉旅館協同組合職員の平野正樹さん(36)は優れた泉質に胸を張る。「子どものあせもが1回の入浴で治り、驚かれることも多いです」
沖合の源泉はやがて「湯島」として整備され、明治時代の埋め立てにより陸続きとなった。源泉の温度は約90度。現在は温泉街に湧く源泉に卵を入れてしばらく待つと、ほんのり塩味が付いた「温泉たまご」が出来上がる。
幕末には京や大坂(大阪)からの湯治客が増えた“熱の湯”は、1880(明治13)年の万国鉱泉博覧会で「世界三等」に輝くなど、早くから国際的な評価も得た。けがやリウマチ、アトピーなどに悩む人たちの人気は根強く、飲めば胃腸病や貧血に良いといわれる。記者ものんびり温泉に漬かった後、早春の風が冷たい湯街を歩いたが、心地よい体の“ほてり”はなかなか冷めなかった。
20軒を超す旅館・ホテルがある和倉温泉は、加賀屋など「最上のもてなし」を提供する高級旅館のイメージが強いが、平野さんは「価格帯やサービス内容は幅広い。予算や好みに応じた宿探しのお手伝いをしたい」と意気込む。
共同浴場「総湯」。露天風呂や足湯など多彩な風呂を備えているほか、観光交流施設も併設している |
2015年春ごろと見込まれる北陸新幹線金沢開業を視野に、温泉街の整備も進む。街の大部分は埋め立て地とあって起伏は少なく、1時間ほどで主な名所を見て歩ける。歓楽街のけばけばしさは全くなく、寺社の静かなたたずまいや路地の落ち着いた家並みが印象的だ。
おととし春、リニューアルオープンした共同浴場「総湯」(大人420円、TEL.0767・62・2221)は「源泉100%」が自慢。4月にも再オープンする「湯っ足りパーク(妻恋舟の湯)」では、波穏やかな七尾湾と能登島を眼前に見ながら足湯に漬かることができる。弁天崎源泉公園には手湯も。「温泉たまご」の出来上がりを待つ間、手首から先を浸しながら海を眺める観光客の姿も多い。旬の海の幸や能登野菜を手軽な値段で味わえる食堂、レストランも温泉街に店を構える。
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「焼きたてベーカリー アンリス」の抹茶(まっちゃ)シュークリーム「和倉長者」 |
“ご当地スイーツ”を食べ比べ!
観光協会・旅館協同組合は温泉街の魅力アップに向け、多彩な企画を打ち出している。「七福神福々めぐり」や大伴家持、高浜虚子らの「句碑・歌碑めぐり」。竹林が美しい青林寺など“隠れた名所”もルートに含まれる。青林寺境内から階段を500段余り上ると「和みの丘」。眼下に温泉街と七尾湾を一望する。
一方、世代を問わず反響が大きいのは「スイーツめぐり」だ。現在、9店舗が地元の食材を使った洋菓子やアイスクリーム、ヨーグルトなどを販売している。3店を選んで使える「スイーツめぐり券」は1枚500円の安さ。「焼きたてベーカリー アンリス」の抹茶(まっちゃ)シュークリーム「和倉長者」には、大粒の小豆「能登大納言」が入っている。夫婦で店を営む松田幸子さん(39)は「遠方から食べ比べに来てくださる人も多いです」と笑みを見せる。海の幸に加え、地酒、スイーツ…。“和倉の美味”も心行くまで堪能したい。
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【観光の問い合わせ】
和倉温泉観光協会・和倉温泉旅館協同組合 TEL.0767・62・1555 http://wakura.or.jp |
【アクセス】
羽田空港から能登空港まで約1時間。能登空港からは、乗合タクシー「ふるさとタクシー」(予約制)の利用が便利。片道1600円。
能登空港と金沢市などを結ぶ能登有料道路は31日(日)正午から通行無料。「のと里山海道」に改称。 |
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