|
人気者シャチのパフォーマンス |
温暖な気候で知られ、1年を通じて観光が楽しめる千葉県の南房総地方。おすすめは雄大な外房の海が目の前に広がる鴨川シーワールド(鴨川市)。同施設ではシャチをはじめ動物たちのパフォーマンスが人気だ。また、伝統の製法を今に伝える老舗醤油(しょうゆ)蔵を訪ね、日本の食文化を考えるのもいい。南房総の魅力に触れようと同地を旅した。
シャチ躍動!
シャチ。「海の王者」ともいわれ、知能は高く、海の生態系の頂点に立つマイルカ科系統の哺乳類だ。現在、世界各国の水族館で飼育されている43頭のうち日本国内にいるのは8頭。そのうちの5頭が鴨川シーワールド(TEL04・7093・4803)で暮らしている。シャチは捕獲が禁じられている希少な保護動物でもある。
そんなシャチを目当てに訪れる来園者は多い。中でも人気はシャチのパフォーマンスだ。白と黒のツートンカラーが美しい体は体長5メートル前後と巨体ながらもひき締まったボディー、動きは実にしなやかで敏速。その流れを上手に操りながらリードしてゆくトレーナーとの息の合った動きが見事だ。前列の見物客には豪快な水しぶきのプレゼントが待っているのでご用心。 |
宮醤油店。店舗は国の登録有形文化財 |
伝統の製法、滋味醸す
鴨川と内房をつなぐ長狭街道は県内有数の米どころ。車窓にのどかな田園風景を眺めながら富津市に入る。
内房に面した富津は香り高いノリの生産や魚介類の豊富な町。そんな食材を味わう際に醤油の存在は欠かせない。ヤマサやキッコーマンなどが本社を置く千葉県は、醤油の生産量全国1位を誇る。今回は大手メーカーが多い同県にあって、家業を貫く宮醤油店(TEL.0439・66・0003)を訪ねた。
同店の名「宮」は創業時の当主が伊勢(三重)の出身であることに由来する名で、創業は江戸末期の1834年。ちなみに銚子のヤマサは本家が和歌山の出身だそうで、醤油の発祥地といわれる和歌山周辺と房総は無縁ではないようだ。
「大手さんと私どものような小規模メーカーの製法の違いはどこかといいますと…」。6代目の主人・宮正藏さん(78)は次のように語ってくれた。
木おけの中で静かに熟成を続けるもろみ |
1つは発酵期間。大手が人工的な温度調節を行うことで発酵期間を短くできるのに対して、宮醤油は自然の四季の流れに沿うため、最低でも熟成に1年はかける。2つめは酵母。宮醤油では土蔵や木おけにすみついた菌が発酵を促す。南房総の風土に寄り添った昔ながらの天然醸造方式を貫いているわけだ。
蔵の中はかぐわしいもろみの香りに満ちていた。木おけの中ではもろみが静かに熟成を続ける。こうして1年以上を経た醤油は、しょっぱいというより複雑なうま味を持つ奥深い味わい。じっくり寝かせるからこそ得られるうまさを実感する。
しかし近頃こうした小規模メーカーは激減している。大手の販売力に対抗しにくいことに加えて醤油消費量の減少によるところも大きい。外・中食に頼る家庭が増えた結果、かつては調味料の主役を担った醤油がドレッシングやマヨネーズと同じ立場になってしまったと宮さんは嘆く。
考えてみればおいしい刺し身や各地の名物料理も、醤油あってこそのごちそうといえるものが多い。日本の風土が育んだ醤油を大切に使う暮らしを心掛けたいと再認識した。 |
|
海苔すき体験 |
お薦めスポット
【マザー牧場】
花やアトラクションありの観光型牧場。食のお薦めはジンギスカン、ソフトクリーム。TEL.0439・37・3211
【海苔すき体験】
生のりを一枚ずつすいて作る昔ながらののり作り体験ができる。焼きのりと貝殻の土産付き730円。要予約(原則30人以上)。松本屋 TEL.0439・87・3808 |
|
| |
|