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赤レンガやなまこ壁が非日常のムードを醸す。
どの酒蔵でも仕込み水が無料で飲める |
広島県東広島市の西条地区は、灘(兵庫)、伏見(京都)と並ぶ三大銘醸地として知られる日本酒の町だ。JR西条駅のすぐ近くにある「酒蔵通り」には蔵元が集中し、酒蔵が並ぶ風情ある町並みを形成している。歴史ある建物が多く残り、散策スポットとして人気だ。10月6日~7日には、毎年恒例の“飲んべえの祭典”酒まつりが開催され多くの観光客でにぎわう。酒好きにはたまらない同地の魅力を個性ある蔵元を中心に紹介しよう。
“酒都”西条の酒蔵通り
標高250~300メートルの高原盆地に位置する西条。同地で酒造りが始まったのは1650年ごろとされる。豊かな水や気温など酒造りに適した気候風土が“酒都・西条”を育んできた。
JR西条駅近くの酒蔵通りは、東西1キロほどの通りに蔵元8軒がひしめく。白と黒のなまこ壁を配した伝統的な建物や、高くそびえる赤レンガの煙突が特徴的だ。「賀茂鶴と白牡丹(はくぼたん)が西条の二大酒蔵。他の蔵元も味のある酒造りを実践しています。西条の酒は甘口が多数派ですが、ご自身の舌で心行くまで試飲してお気に入りを見つけて」と東広島ボランティアガイドの会会長の徳永京子さん(63)。徳永さんの案内で、「ちょっと一杯」と酒蔵を巡った―。
白牡丹酒造
広島県で最古参を誇る蔵元。石田三成に仕えた智将・島左近の子孫が1675年に開いたと伝えられる。
蜀山人(大田南畝)や夏目漱石、棟方志功ら文人墨客に多く愛された。胃弱のためあまり酒をたしなまなかった漱石も、「白牡丹」だけは愛飲したとされ、《白牡丹李白が顔に崩れけり》という句を残している。
TEL.082・422・2142
賀茂泉酒造
中原朋子さん |
日本酒本来の味を目指して、米と米麹(こうじ)だけで醸す純米酒造りが信条の蔵元。炭素ろ過を行わないため、ほんのり山吹色をした酒は、芳醇(ほうじゅん)な味わいが口に広がる。思わず「もう一杯」と言いたくなるおいしさだ。
敷地内にある旧県立醸造支場を改築した、レトロな「酒泉館」は、“お酒の喫茶店”として人気(開館は土日および毎月4日と10日)。唎酒師で同社企画課の中原朋子さん(48)は「常時20種類以上のお酒が味わえるほか、お酒の図書室もあります」と話す。
TEL.082・423・2118
賀茂輝酒造のカフェで味わえる「吟醸シフォンケーキ」 |
賀茂輝酒造
オンザロックでも楽しめる蔵出しの原酒「モルト・カモキ」、玄米を使った「赤米仕込み」などを送り出す、新しい感性の個性派蔵元。
また、古い蔵を改装したカフェ「円座(わろうだ)」では、「吟醸シフォンケーキ」(400円)が人気だ。シフォンケーキに同社の吟醸酒をそのままかけて食べる新感覚スイーツ。ケーキの甘さと吟醸酒のほのかな香りが相性抜群だ。
TEL.082・422・2537
たっぷり日本酒を注いだ美酒鍋。「欅」では目の前で料理してもらえる |
絶品の「美酒鍋」
飲んで歩けばおなかが減る。おすすめの料理は、酒どころならではの名物「美酒鍋(びしゅなべ)」。豚バラ肉や砂ずり、厚揚げ、野菜などを酒で煮込み、塩・コショウだけで味付けしたシンプルな鍋料理だ。もとは酒蔵の“賄い料理”で、蔵人が酒造りの合間に食べても利き酒に影響が出ないように、みそやしょうゆは使用しないのだという。
日本酒のうま味が各食材の味を最高に引き立てて、驚くほどおいしい。酒のアルコール分は熱で飛ぶため、子どもや酒の苦手な人でも堪能できる絶品料理だ。「欅(けやき)」(TEL.082・421・3005)や賀茂鶴酒造直営レストラン「佛蘭西屋(ふらんすや)」(TEL.082・422・8008)など市内の料理店で提供している。 |
酒まつり
10月6日(土)~7日(日)、JR西条駅周辺で。
各酒蔵を開放してさまざまなイベントを行うほか、神事なども。「酒ひろば」(入場料当日1800円)では、地元・西条のほか、全国各地の蔵元から約900銘柄が集まり、自由に日本酒を試飲できる。毎年20万人以上を集める酒の一大イベントだ。
実行委員会 TEL.082・420・0330 |
【問い合わせ】
ガイドなどはJR西条駅前観光案内所 TEL.082・421・2511
観光全般は(社)東広島市観光協会 TEL.082・420・0310 |
【アクセス】
新幹線で広島駅下車、JR山陽本線に乗り換え約35分で西条駅へ。または新幹線で東広島駅下車し「芸陽バス」で西条駅(約25分)へ。 |
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